日本の年金「23万円」は現実的か?現役世代が知るべき老後資金の真実

下流老人や老後破産といった言葉が現実味を帯びる現代。多くの日本人が老後資金に不安を抱えています。日本年金機構が公表した年金額は、特定のモデルケースに過ぎず、その「平均」の真実を深く理解することが求められます。

日本の高齢者が年金や老後資金について考える様子を示すイメージ画像日本の高齢者が年金や老後資金について考える様子を示すイメージ画像

国が示す年金「モデルケース」とその現実

国税庁の『令和5年分 民間給与実態統計調査結果』によると、一年を通じて勤務した給与所得者の平均給与は460万円(ボーナスを含めない月収換算で約38万円)。手取りでは約30万円となり、物価高騰が続く中、日々の生活にゆとりを感じにくい状況です。

このような背景のもと、日本年金機構は2025年4月に年金額の1.9%引き上げを発表し、令和7年度の標準的な年金受給額を公表しました。

  • 国民年金(老齢基礎年金、満額):月額 69,308円
  • 厚生年金(夫婦2人分の老齢基礎年金を含む標準的な年金額):月額 232,784円

夫婦で合計約30万円。この数字だけを見ると、老後への漠然とした不安が和らぐかもしれません。しかし、厚生年金には「※平均的な収入(平均標準報酬(賞与含む月額換算)45.5万円)で40年間就業した場合」という重要な注釈が付きます。これは、平均月収45.5万円を40年間継続して勤務した場合のモデルケースであり、非正規雇用の増加や頻繁な転職が一般的な現代において、この条件を満たすことは多くの人にとって現実的ではありません。実際の年金受給者の多くは、この公表平均額を下回るのが実情です。

日本の年金制度の根幹「賦課方式」とは

そもそも、日本の公的年金制度は「賦課方式」を採用しています。これは、現役世代が納めた保険料が、そのまま現在の年金受給世代に給付される「世代間扶養」を基本とするものです。そのため、「自分が支払った分だけ、将来そのまま戻ってくるのか?」という問いに対しては、制度構造上、単純な損得勘定では語れません。厚生労働省は特設ページ『いっしょに検証!公的年金』などで、公的年金制度の理解促進に努めています。

まとめ:老後資金は自助努力が不可欠

公表された年金額は特定のモデルケースに過ぎず、多くの現役世代にとってその水準の達成は困難です。日本の年金制度は賦課方式であるため、将来の受給額は社会情勢に大きく左右される可能性があります。老後の安心を確保するには、公的年金だけに依存せず、iDeCoやつみたてNISAなどの自助努力による資産形成を組み合わせた、早めの多角的な資金計画が不可欠と言えるでしょう。

参考文献

  • 国税庁: 『令和5年分 民間給与実態統計調査結果』
  • 日本年金機構: 「令和7年度の年金額について」(2025年4月公表)
  • 厚生労働省: 『いっしょに検証!公的年金』