先月30日にホワイトハウスで妥結した米韓関税交渉は、事実上、大枠の合意に留まったとの評価が支配的です。両国は残された溝を埋めるため、今後も追加交渉を継続する方針を示しています。韓国産業通商資源部の呂翰九通商交渉本部長は「今回の交渉は口頭で行われ、書面での合意文書はない」と明らかにしました。また、具潤哲副首相兼企画財政部長官は「具体的な戦略を立て、能動的に対応したい」と強調しており、「悪魔は細部に宿る」という認識を共有しています。
ホワイトハウスで米韓関税交渉妥結後に記念撮影に応じるトランプ米大統領と韓国政府貿易交渉団
残された主要な交渉分野:デジタル、農業、投資
通商当局などによると、今後の米韓追加交渉で焦点となる主要な分野は以下の通りです。
デジタル規制の動向
米国は、韓国の「オンラインプラットフォーム法」や「Google精密地図搬出許容」に関するデジタル規制を、解消すべき非関税障壁と強く規定してきました。特にオンラインプラットフォーム法はGoogleやAppleなどの米国のビッグテック企業が規制範囲に含まれるため、その動向が注目されています。通商専門家は、同法がまだ国内で立法前であるため、今回の交渉案件からは除外されたと見ています。関連法案を推進する与党は公正取引委員会と懇談会を予定しており、Googleへの高精密国内地図搬出の許容については、今月中に開催される米韓首脳会談後に結論が出される見込みです。
農畜産物検疫手続きの深化
韓国の農畜産物市場開放に関しては、検疫手続きなど詳細な協議が今後進められる可能性が高いです。米国はリンゴやモモなどの果物、野菜類に対する検疫手続きについて韓国交渉団に問い合わせを行いました。具副首相も「今後、検疫手続き改善を含む技術的事項に関する協議が継続されるだろう」と説明しています。
現在、韓国で輸入リスク分析が進められている米国産農産物は10種類に上ります。これには柑橘類のタンジェロをはじめ、リンゴ、ネクタリン、スモモ、アンズ、洋ナシ、ジャガイモなどが含まれます。韓国での検疫プロセスは合計8段階の手順を踏みますが、進捗状況はジャガイモが6段階で最も高く、次いでネクタリン(5段階)、ミニキャロット(4段階)、洋ナシ(3段階)、リンゴ(2段階)となっています。また、食用遺伝子組み換え作物(LMO)では、農村振興庁が米国産LMOジャガイモに3月に「適合」判定を下しており、現在は食品医薬品安全処による安全性検査手続きのみが残っています。
ファンド投資の具体化と収益分配
韓国が提示した3500億ドル規模の投資のうち、造船業への1500億ドルを除く2000億ドルのファンドの構成方式、使い道、そして収益分配方式については、依然として曖昧さが残っています。ラトニック米商務長官は「その収益の90%は米国民に行く」と主張する一方、韓国政府はこれを「再投資の概念」と説明しており、両者の解釈に隔たりが見られます。
国防費・為替問題は議論見送り
韓国は今回の交渉で、通商と安全保障を一体化した「パッケージディール」を準備していましたが、国防費や防衛費、為替問題など、安全保障に関わる重要な事項については、今回の関税交渉では議論されませんでした。
今後の展望:米韓首脳会談の役割
高麗大学国際大学院のパク・ソンフン名誉教授は、農畜産物市場開放については韓国政府の言葉通り検疫手続きの改善で整理される可能性が高いと見ています。しかし、3500億ドルの投資に関しては、依然として大きな溝があるとの認識を示しました。教授は、今月中旬に予定されている米韓首脳会談が、こうした隔たりの大きい部分について決着をつける上で極めて重要であると強調しています。今後の米韓関係の行方を占う上で、この首脳会談の成果が注目されます。