トランプ氏、雇用統計改ざん主張と局長解任で統計信頼性に懸念の声:政権擁護と専門家の批判

米労働省が毎月発表する米雇用統計において、ドナルド・トランプ大統領がデータ改ざんを根拠なく主張し、発表元である労働統計局の局長を解任した問題が波紋を広げています。この一連の動きに対し、経済専門家や元当局者からは、米国経済の重要指標である統計の信頼性が損なわれるとの批判が相次いでいます。一方で、トランプ政権の高官らは、大統領の判断は正当であると擁護の姿勢を見せています。

7月雇用統計の「異例」下方修正とトランプ氏の解任命令

問題の発端は、労働統計局が8月1日に発表した7月の雇用統計です。この発表において、5月と6月の雇用者数が当初の発表より合計25万8千人も下方修正されたことが明らかになりました。この大幅な修正を受け、トランプ大統領は労働統計局のマッケンターファー局長の解任を命令しました。大統領は、統計が「操作された」と繰り返し非難しましたが、その根拠を具体的に示すことはありませんでした。この異例の解任劇は、政府機関の独立性に対する政治介入であるとの見方を強めています。

政権高官による大統領判断の擁護

トランプ大統領の行動に対し、政権内部からは擁護の声が上がっています。国家経済会議(NEC)のハセット委員長は、トランプ氏が「新たなリーダーを求めるのは正当だ」と述べ、下方修正に対して「正直困惑している。十分な説明がなかった」と不満を表明しました。さらに、「労働統計局には新しい視点が必要だ。誰かがこの問題を正すべきだ」と付け加え、大統領の判断を正当化しました。また、米通商代表部(USTR)のグリア代表もCBSの番組に出演し、トランプ大統領が雇用統計に対して「深刻な懸念」を抱いていたと擁護しました。

トランプ政権の経済関連高官がテレビ番組で雇用統計問題について語る様子。トランプ政権の経済関連高官がテレビ番組で雇用統計問題について語る様子。

統計の信頼性への懸念:専門家と元当局者の批判

しかし、多くの経済専門家や元当局者は、今回の局長解任が労働統計局、ひいては米国の経済統計全体の信頼性を揺るがすものだと強く非難しています。元労働統計局長のウィリアム・ビーチ氏はCNNに対し、「局長が雇用統計を操作する余地はまったくない」と断言しました。彼は、自身がトランプ政権1期目に局長を務めていた際にも、「50万人規模の雇用統計の修正があった」と指摘し、月次の雇用統計の修正は珍しいことではないと強調しました。これは、統計の信頼性が個人の意思によって左右されるものではないという専門家の共通認識を示すものです。

労働統計局による修正理由の説明

労働統計局は、今回の大幅な下方修正の具体的な理由を詳細には明らかにしなかったものの、月次の統計修正については定常的なプロセスであることを説明しています。同局によると、「月次の修正は、推定値発表以降に企業や政府機関から受け取った追加報告と、季節要因の再計算によるもの」とされています。これは、速報値と確定値の間に生じる差異であり、統計作成における一般的な慣行であると示唆しています。

結論:経済統計の独立性と信頼性の重要性

トランプ大統領による米雇用統計データへの根拠なき批判と、それに続く労働統計局長の解任は、米国経済の透明性と信頼性に深刻な疑問を投げかけるものです。経済専門家や元当局者からの強い批判は、政治的介入から独立した客観的な経済統計の作成がいかに重要であるかを浮き彫りにしています。この問題は、今後の米国の経済政策や国際社会からの信頼にも影響を与える可能性があり、その動向が注目されます。

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