コロナ禍を経て、私たちの消費行動は大きく変化し、効率を追求する「効率消費」と、特別な体験や高品質な商品を求める「目的来店型消費」の二極化が進んでいます。日用品はECサイトや近所の店で済ませる一方、時間やコストをかけてでも遠方へ足を運ぶ消費が増加傾向にあります。本稿では、東京23区在住者の休日の「おでかけ消費」に焦点を当て、クレジットカード決済データを用いた分析から見えてきた最新トレンドと、人々が何を求めてどこを目的地としているのかについて深掘りします。
「おでかけ消費」を測る指標「地域特化係数(LQ)」とは
今回の分析では、単純な売上順位では見えてこない「わざわざ足を運ぶ場所」を明らかにするため、「地域特化係数(LQ)」を採用しました。これは、東京23区在住者が休日に50キロメートル圏内で購入している平均的な業種割合と比較し、その場所で特定の業種に対し3キロメートル以上足を延ばして購買している人の割合がどれほど高いかを示す指標です。算出された数値は最終的に偏差値に変換され、その地域の特性と吸引力を客観的に示します。分析は市区町村よりも細かい「大字(おおあざ)」レベルで行われ、飲食、小売、アパレル、娯楽などの小業種に限定。大規模チェーン店や観光地、サービスエリアは対象から除外されています。データはクレジットカードの決済データを利用しており、プライバシー保護のため個人が特定されないよう統計化されていますが、現金決済が多い業種はランキングから外れやすい点は留意が必要です。
東京23区民の休日消費動向を示すデータグラフ。特定エリアへの「目的来店」傾向を視覚化。
20〜30代の消費トレンド:野毛のホルモンと鮮魚店の魅力
20〜30代の休日における「おでかけ消費」ランキングでは、神奈川県横浜市中区野毛町にある「ホルモン」が堂々の1位を獲得しました。これは「野毛ホルモンセンター」があるエリアとして知られています。さらに注目すべきは、2位以下を席巻した「鮮魚店」の存在です。これらの上位エリアに共通して見られるのは、全国的に高い人気を誇る鮮魚チェーン「角上魚類」が立地しているという点でした。この結果からは、自分や家族のためだけでなく、友人たちとの週末のホームパーティーやバーベキューを彩るために、「少しでも美味しく、質の高い食材」を求めて遠方まで足を運ぶ、現代の消費者のこだわりが強く感じられます。
今回の分析により、単なる利便性だけでなく、特定の「体験」や「品質」を求めて時間や労力を惜しまない「目的来店型消費」のトレンドが明確になりました。特に若い世代において、食へのこだわりや交流の場を豊かにする消費が活発であることが示唆されます。このようなデータに基づいた消費行動の理解は、今後の市場戦略を考える上で不可欠な洞察を提供するでしょう。