イスラエル、ガザ「完全占領」へ方針転換か:人道危機深化と国際社会の懸念

イスラエルのベンヤミン・ネタニヤフ首相が、ガザ地区全域の占領を近く指示する可能性が高まっていると、現地メディアが報じました。この軍事作戦が拡大されれば、すでに飢餓による死者が続出しているガザ地区では、さらに甚大な犠牲が伴うと懸念されています。人道状況の悪化が深刻さを増す中、国際社会からの批判も一層強まることが予想されます。

ガザ地区北部のベイト・ラヒアで食料支援物資(小麦粉)を運ぶパレスチナ住民。イスラエルが一時的な軍事作戦中断により人道支援を許可した状況を示す。ガザ地区北部のベイト・ラヒアで食料支援物資(小麦粉)を運ぶパレスチナ住民。イスラエルが一時的な軍事作戦中断により人道支援を許可した状況を示す。

ネタニヤフ首相の「完全占領」示唆と軍幹部の反応

イスラエルのチャンネル12などの現地メディアは5日(現地時間)、首相府関係者の話として「ネタニヤフ首相がガザ全域を掌握する方向に心が傾いている」と報じました。エルサレム・ポストは、この作戦に、ハマスがイスラエルの生存する人質を拘束している地域に対する軍事作戦も含まれると説明しています。ロイター通信によると、ネタニヤフ首相は同日、カッツ国防相およびエヤル・ザミール軍参謀総長と戦略を協議した後、今週後半に内閣に提案する方針です。その後、首相は軍訓練所で新兵たちに対し「依然としてガザ地区で敵を殲滅し、人質を解放し、ガザが再びイスラエルに脅威を及ぼさないようにしなければならない。我々はこの任務を諦めない」と語り、ガザ地区の完全占領を示唆しました。

ネタニヤフ首相らの強硬意見が主流となりつつある一方で、イスラエル高官の間では立場が分かれており、これが依然として不確定要素となっています。特に、ガザ地区内に生存する人質の安全が脅かされる可能性があるとして、ザミール参謀総長は反対意見を示しています。その他にも、ガザ地区を占領した後の長期的な統治が軍の戦力に大きな負担となりうるという点から、軍内部でも懸念が少なくありません。極右のイタマル・ベン=グヴィル国家安全保障相が最近、ザミール参謀総長に「政府がガザ全域の占領を決定すれば、これを実行する意思があると明確にせよ」と促したのは、こうした内部の不一致を浮き彫りにしています。

戦略的圧力としての「完全占領」論

一部では、イスラエルがガザ地区の完全占領を有力な選択肢として掲げることで、ハマスに圧力をかけているとの見方も出ています。これは、将来的な停戦交渉において、すべての人質の解放を確約させるための、一種の交渉戦略である可能性が指摘されています。

深刻化するガザの人道危機と国際社会の反発

イスラエルがガザ地区の完全占領作戦を実行すれば、国際的な批判世論はさらに激しくなることが予想されます。すでにイスラエルによる封鎖政策でガザ地区の飢餓事態は日々深刻さを増しており、国際社会はもちろん、イスラエル国内でも反戦の声が勢いを増しています。フランス・英国・カナダなど主要な西側諸国は、9月の国連総会でパレスチナを国家として公式に承認するとの立場を示しており、テルアビブなどイスラエルの中心都市では反戦デモの頻度が増加しています。

ガザ地区当局によると、戦争勃発以降、現在までにパレスチナ人188人が飢餓で死亡し、そのうち94人は子どもであると推定されています。ガザ地区保健省はこの日、「過去24時間の間に、8人が飢餓または栄養失調で死亡し、さらに79人がイスラエル軍の攻撃で死亡した」と発表しました。

参考文献

  • ロイター通信
  • エルサレム・ポスト
  • チャンネル12
  • ガザ地区保健省