テレビ宮崎が挑む「3局クロスネット」:苦労も喜びも3倍の独自戦略

日本の地方テレビ局の中でも、UMKテレビ宮崎はその非常にユニークな放送形態で知られています。宮崎県に拠点を置く同局は、フジテレビ、日本テレビ、テレビ朝日の3つの主要キー局の番組を放送する、日本で唯一の「3局クロスネット局」という独自の道を歩んでいます。この複雑でありながらも革新的なスタイルは、業界内でどのような意義を持つのでしょうか。テレビ宮崎の榎木田朱美社長が、その経営の実情と、この特殊な環境下で培われた独自の局の「色」について語ります。

日本で唯一の「3局クロスネット局」であるテレビ宮崎の榎木田朱美社長日本で唯一の「3局クロスネット局」であるテレビ宮崎の榎木田朱美社長

日本唯一の「3局クロスネット局」とは

テレビ宮崎の番組編成は、全国の視聴者から見ても特異なものです。例えば、朝はフジテレビ系の「めざましテレビ」、昼にはテレビ朝日系の「ANNニュース」、夕方には再びフジテレビ系の「news イット!」、そして夜には日本テレビ系の「news zero」が連なる、まさに独自のタイムテーブルが組まれています。これは、フジテレビ、日本テレビ、テレビ朝日の3局とニュース番組の協定を結び、「親局」としてそれぞれの番組を放送しているためです。ニュース番組だけでなく、各局が制作するドラマやバラエティ番組なども番組表に混在しており、業界ではこれを「3局クロスネット局」と呼びます。この形態は、現在の日本においてテレビ宮崎が唯一であり、その存在自体が日本のメディア業界における特筆すべき事例となっています。しかし、テレビ宮崎が開局した55年前から、自らこの道を積極的に選んだわけではありません。そこには、選ばざるを得なかった歴史的背景が存在します。

クロスネット採用の歴史的背景

宮崎県におけるテレビとラジオを合わせた広告市場規模は、約120億円と全国的に見ても最低水準にあります。このような経済的背景から、宮崎県内の民放テレビ局はTBS系の宮崎放送とテレビ宮崎の2局体制が維持されてきました。開局当初、潤沢な資金がない中で複数の系列局の番組を放送せざるを得ない状況が、結果的に現在の「3局クロスネット」というユニークなスタイルを生み出したのです。東京では互いにしのぎを削るライバルである3つのキー局を「親」に持つことは、編成面でも経営方針の面でも非常に複雑な課題を伴います。しかし、テレビ宮崎の榎木田社長は、この複雑な環境をむしろ前向きに捉えています。

「ガラパゴス経営」が生むUMKの独自性

榎木田社長は、55年間の歴史の中でテレビ宮崎が「ガラパゴス的な育ちをしてきた」と表現します。これは、限られた環境下で独自の進化を遂げた生物のように、複数の「親局」を持つという特殊な状況が、テレビ宮崎独自の企業文化と番組制作スタイルを育んできたことを意味します。「色々な味を知り、そこに苦味もあるけれど、最終的にはUMKの色にすることへの思いが強い」と語る社長の言葉からは、困難を乗り越え、自局のアイデンティティを確立してきた強い意志が感じられます。この「3局クロスネット局」という形態は、「喜びも3倍、苦労も3倍」という言葉に集約されるように、他の地方局では経験できない独特の挑戦と成長の機会をもたらしているのです。

テレビ宮崎の「3局クロスネット」という独自の経営モデルは、日本の地域メディアが直面する課題と、そこから生まれる革新的な取り組みを示す好例です。市場規模の制約を逆手に取り、複数の大手系列局との連携を深めることで、地域に根差しながらも多様なコンテンツを提供するという独自性を確立しています。

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