韓国の地下水汚染:発がん性物質検出と情報非公開問題が住民の不安を増幅

韓国の光州(クァンジュ)広域市にある主要産業団地で、地下水からの発がん性物質検出が相次ぎ、住民の健康への懸念が高まっています。特に、一部地域では行政当局が水質検査結果の全容を公開せず、その情報非公開が市民の不安をさらに増幅させる事態となっています。これは、環境問題における行政の透明性と、住民の知る権利のバランスが問われる重要な局面です。

光州北区・本村産業団地:公表されない「その他の有害物質」

光州北区では、1級発がん物質の検出が問題となっていた本村(ポンチョン)産業団地とその周辺の地下水13カ所からサンプルを採取し、水質検査を実施しました。その結果、国際がん研究機関(IARC)がグループ1の発がん物質と指定するトリクロロエチレン(TCE)およびテトラクロロエチレン(PCE)については、いずれも検出されなかったか、または基準値以内であることが確認されました。これらの物質は、主に金属部品の洗浄剤や接着剤添加剤などに使われます。

しかし、光州北区がTCEとPCE以外の18項目に関する数値を非公開としたことで、住民の間では強い不信感が広がっています。これらの非公開項目には、鉛、水銀、ヒ素といった健康に悪影響を及ぼす可能性のある重金属やその他の有害物質が含まれているため、市民団体からは情報の全面的な公開が強く求められています。光州環境運動連合のキム・ジョンピル事務局長は、「すべての有害物質項目を公開し、地下水の使用可否を明確にすべきだ。行政の沈黙は市民の不安を不必要に高める」と主張しています。

これに対し、北区の関係者は「対象地域が私有施設であるため、情報の公開には関係者の同意が必要だ。残りの項目の公開については現在内部で検討中」と説明しています。また、今回の水質検査がTCEが過去に検出された地点とは異なる場所で行われ、有害物質の拡散状況を確認する目的であったことも付け加えられています。本村産業団地における汚染源は、旧ロケット電池工場やホナムシャシ工場跡地と推定されており、1980年代から1990年代にかけて使用された有害物質が地下水に残留していると見られています。

韓国光州本村産業団地の地下水汚染状況を示す地図と調査概要韓国光州本村産業団地の地下水汚染状況を示す地図と調査概要

光州光山区・河南産業団地:繰り返される汚染と遅れる行政対応

一方、同じ光州広域市内にある光山区(クァンサング)の河南(ハナム)産業団地では、2年前に発がん物質が検出されていたにもかかわらず、再びTCEが検出されるという事態が発生しました。河南産団およびその周辺15カ所を対象とした最近の水質検査では、2カ所で基準値超過が確認されています。

光山区は、2023年の河南産団地下水・土壌汚染実態調査の委託調査で、すでに基準値を大幅に超えるTCE・PCEが検出されていたにもかかわらず、具体的な措置を講じてこなかったため、強い批判に晒されていました。発がん性物質の拡散懸念が深刻化したことを受け、光山区は現在、河南産団一帯に設置された実態調査用地下水井戸245カ所に対し、順次水質検査を進めています。これまでに135カ所の検査が完了し、そのうち13カ所で不適合の判定が下され、水質改善命令が出されています。

光山区の関係者は、「基準値を超過した業者に対しては水質改善命令を出しており、30日以内に改善されない場合、地下水法に基づいて強制的に井戸を閉鎖するなどの後続措置を取る予定だ」と述べ、今後の厳格な対応を強調しています。

結論:住民の健康を守るための情報公開と迅速な対策の重要性

韓国光州の各産業団地で明らかになった地下水汚染問題は、地域住民の健康と生活環境に直接関わる深刻な課題です。特に、発がん性物質の検出と、それに対する行政の情報公開のあり方が、住民の不安を左右する重要な要素となっています。行政当局は、住民の知る権利を尊重し、すべての関連情報を透明かつ迅速に公開する責任があります。また、汚染源の特定と除去、そして汚染の拡散を防ぐための具体的な対策を速やかに実行することが不可欠です。透明性の高い情報共有と迅速な行動こそが、住民の信頼を取り戻し、安全な生活環境を確保するための最優先事項と言えるでしょう。

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