ワシントン時事によると、米政権が日本に対し15%の相互関税を発動した。大統領令には、日本への15%上乗せのみが明記され、日本側が合意したと主張する相互関税の「特例」は反映されなかった。合意を急ぐあまり、その内容を文書化しなかった日本の「詰めの甘さ」が露呈した形となり、想定外の15%上乗せという事態を招いている。
ホワイトハウス公式Xアカウントによる日米相互関税に関する投稿画像
「相互関税」を巡る日米の認識のずれ
日本政府の説明によれば、相互関税は、元の税率が15%以上の品目には適用されず、これを下回る品目にのみ15%が課される「特例」を米国に最初に認めさせたのは日本側であるとされている。欧州連合(EU)もこの特例に追随した。しかし、先月末に発出された大統領令では、EUについては特例が明記されたものの、日本については「15%を追加」との表記に留まった。米政府高官は6日、「既存の税率に上乗せされる」と述べ、追加関税であることを明確にした。この見解は、日本が想定していた「特例」とは大きく異なる。
合意文書不在が招いた「付け入る隙」
日本は関税引き下げを優先し、早期妥結を目指した結果、合意内容の明文化を見送った。この文書化の欠如が、米国が自国に有利な解釈をする「付け入る隙」を生んだとみられる。米国は多くの貿易相手国・地域と並行して交渉を進めており、個別に文書を作成する余裕がなかったとも指摘される。実際に、合意内容を記した大統領令に個別の署名が盛り込まれたのは、先行して交渉した英国のケースのみである。
今後の見通しと潜在的なリスク
赤沢亮正経済再生担当相は「合意した時点やその前後を含め、米側の閣僚から聞いている説明と違う内容になっている」と指摘し、今回の訪米で認識のずれを埋める考えを示している。しかし、米政権は既に250%の医薬品関税に加え、100%の半導体関税も準備していると報じられている。日本政府はこれらの新たな関税が他国と比較して不利にならず、15%のままに抑えられると説明するものの、今回の相互関税と同様に、認識の食い違いにより再び「口約束のツケ」を払うリスクは排除できない。
結論
今回の米国の相互関税発動は、日米間の合意内容に対する解釈の相違、特に文書化の不備が顕在化した結果である。日本政府が主張する「特例」が適用されなかった事態は、今後の貿易交渉において、合意内容の徹底した明文化と確認の重要性を浮き彫りにした。将来的な追加関税リスクを回避するためにも、両国間の認識のすり合わせと透明性の確保が喫緊の課題となっている。