オランダ極右党首ウィルダース氏のSNS投稿が物議、差別苦情2500件超

オランダの極右政党「自由党(PVV)」を率いるヘルト・ウィルダース党首のSNS投稿が、大きな波紋を呼んでいます。この投稿に対し、同国の反差別ホットラインには2500件を超える苦情が寄せられ、これは過去2番目に多い件数だと発表されました。問題の投稿は、社会の分断を招き、特定の集団に対する偏見を助長するとして、広範な非難を受けています。

物議を醸した投稿の内容とその意図

ウィルダース氏が今週投稿したのは、金髪で白い肌に青い瞳の若い女性(キャプションは「PVV」)と、ヒジャブを身に着け険しい表情をする年配の女性(キャプションは「PvdA」(左派の労働党))を並べた画像でした。この画像には「10月29日、選択はあなた次第」というコメントが添えられ、来たる総選挙を意識したものでした。

反差別ホットライン「Discriminatie.nl」の広報担当者は、この画像が「分断を招き、汚名を着せ、差別的」であり、「イスラム教徒を悪く見せる」意図が明確であると指摘しました。同ホットラインに寄せられた苦情やコメントは「社会からの明確なメッセージ」であるとし、「下品」「悪意に満ちている」「人種差別的」といった強い非難の声が多数寄せられたと報告されています。

社会からの明確なメッセージと今後の対応

ウィルダース氏の投稿への苦情件数は、2020年の新型コロナウイルスパンデミック中に問題となった「予防は中国よりマシだ」という楽曲に対する4000件に次ぐ、過去2番目の多さとなりました。この事態を受け、同ホットラインは正式な告訴を含め、今後の対応を検討している段階ですが、まだ最終的な決定には至っていません。

ホットラインは声明で、「これら二つの女性の画像を対比させることで、『私たち対彼女たち』という物語が語られている。これはオランダが目指す包摂的な社会とは相いれない」と強調しました。「このような像は偏見を強め、集団間の溝を広げる可能性がある」「(政治は激しいものかもしれないが)憎悪、排除、差別をあおってはならない」と続け、政治的言動が社会に与える影響の大きさを警告しています。

オランダ極右党首ヘルト・ウィルダース氏が難民問題に関する抗議活動で支持者と交流する様子オランダ極右党首ヘルト・ウィルダース氏が難民問題に関する抗議活動で支持者と交流する様子

ウィルダース氏の反イスラム姿勢と総選挙への影響

長年にわたり反イスラム教の立場を掲げて選挙活動を展開してきたウィルダース氏は、今回の物議を醸す投稿後もその姿勢をさらに強めました。彼は自身のX(旧ツイッター)に、「オランダ人ファースト。イスラム教はオランダにふさわしくない。犯罪外国人は国外追放せよ。私たちの娘たち(若いオランダ人女性たち)が再び安全に街を歩けるようにしなければならない」と投稿し、強硬なメッセージを発信し続けています。

ウィルダース氏率いる自由党は今年6月、移民問題を巡る対立から脆弱な4党連立政権を離脱し、オランダ政界に大きな衝撃を与えました。10月29日に予定されている総選挙に向けて、ウィルダース氏はこの移民問題に対する強硬な姿勢を前面に押し出すことで、自由党が第1党となった過去の衝撃的な勝利の再現を狙っていると見られています。今回のSNS投稿を巡る騒動は、総選挙を前にしたオランダ社会の分断と、移民・統合問題への強い関心を改めて浮き彫りにしています。

参考文献