近年、再生可能エネルギーが化石燃料の消費に与える影響について、過度な楽観論が広がる傾向が見られます。しかし、経済協力開発機構(OECD)に加盟していない途上国やエネルギー集約型産業においては、再生可能エネルギーが化石燃料を完全に置き換えるには至っておらず、現実はより複雑です。再生可能エネルギーの急成長にもかかわらず、世界の電力需要の増加には追いついていないのが現状です。これは、英エネルギー研究所(EI)が公表した「2025年世界エネルギー統計報告」から読み取れる重要な点です。
世界のエネルギー消費構造と再生可能エネルギーの割合
世界のエネルギー消費の現実
2023年の世界の総エネルギー消費量は合計580エクサジュール(EJ)でしたが、そのうち再生可能エネルギーの消費量はわずか29.97EJで、全体に占める割合は5.2%にとどまりました。2024年には32.74EJに増加したものの、その割合は依然として5.5%です。世界のエネルギー需要は2023年から2024年にかけて11.9EJ増加しましたが、再生可能エネルギーが供給できたのはわずか2.7EJ(約23%)に過ぎませんでした。残りの大半は化石燃料が担い、特に天然ガスが4.1EJで最大の割合を占めています。このため、再生可能エネルギーの消費量が記録的に伸びたにもかかわらず、二酸化炭素排出量は2024年も増加を続けています。
一部の国の明るい兆しと構造的課題
一方で、いくつかの明るい話題もあります。2024年には、日本、アルゼンチン、オランダ、ポーランド、ニュージーランド、チェコ、英国などの国々で、再生可能エネルギーの成長が化石燃料の増加を上回ると見込まれています。米国では同年、再生可能エネルギーが電力需要増加分の約67%を賄い、世界平均を大きく上回る実績を示しました。しかし、増加分の全てを化石燃料なしで補うには依然として不十分です。
中国やインドのような国々は、世界の石炭と天然ガス消費の大部分を占め、二酸化炭素排出量の多い化石燃料への依存を強めています。その結果、再生可能エネルギーの成長は加速しているものの、化石燃料を代替するほどには至らず、むしろ増大する電力需要を補う形で炭素排出量が増加し続けているという構造的な矛盾が生じています。
太陽光発電の記録的成長
明るい話題の中でも特筆すべきは、太陽光発電の急成長です。2024年、世界の太陽光発電量は前年比27.5%増加し、7.7EJという新記録を達成しました。太陽光発電量は過去10年間にわたり年平均25.8%のペースで伸びており、これは主要なエネルギー源の中で最も速い成長速度です。
非OECD諸国は昨年、世界の太陽光発電の57%を占め、中国単独で3.0EJを発電し、世界全体の4割近くを占めました。インドの太陽光発電量も2014年のわずか0.02EJから2024年には0.5EJへと25倍に拡大し、政府による太陽光パネルの屋上設置計画や送電網の拡張がその背景にあります。米国の2024年の太陽光発電量は1.1EJで、世界全体の14.6%を占めますが、10年間の複合成長率は24.4%と世界平均を下回っています。
再生可能エネルギー、特に太陽光発電の成長は目覚ましいものがありますが、現在の世界のエネルギー需要の増加速度には追いついておらず、化石燃料への依存とそれに伴う二酸化炭素排出量の増加は依然として深刻な課題です。持続可能なエネルギーへの移行には、さらなる技術革新と国際的な取り組みが不可欠である現実を、「2025年世界エネルギー統計報告」は示唆しています。
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