ティム・クックCEO、トランプ氏への「献上品」に世論の波紋 – アップルの国内製造戦略と批判の背景

アップルCEOのティム・クック氏がドナルド・トランプ元米大統領と行った会談が、「恥ずかしく、吐き気がする」とソーシャルメディア上で激しい批判を浴びています。この論争は、クック氏がトランプ氏に贈呈した「特別な」ガラス作品と、米国国内製造への投資を巡るアップルの戦略的判断に端を発しています。

「世界に一つ」の特製ガラス作品:その詳細と背景

2025年8月6日、米ワシントンDCのホワイトハウスで行われた会談で、ティム・クック氏はドナルド・トランプ氏に対し、24カラットの金製台座に載せられたアップル製の特製ガラス作品を贈りました。クック氏の説明によると、このガラスは「コーニング社が製造し、大統領のために刻印を施した、世界で1つだけの特別な品」であり、「デザインは現在アップルに勤める元米海兵隊伍長によるもの」とのことです。また、金製台座はユタ州で製作されたものでした。この会談は、トランプ政権が推進する国内製造回帰政策にアップルが事実上応じたことを祝う意味合いが強いと見られています。

トランプ政権の国内製造奨励策とアップルの対応

トランプ氏は今年初め、すべての輸入品に対し高関税を課す方針を発表し、外国製造に依存する米企業に対し、生産拠点を国内に戻すよう強く促してきました。会談同日には、輸入半導体チップすべてに100%の関税を課すことも表明しましたが、米国内製造に投資する企業は免除されると明言しました。これを受け、アップルは今後4年間で6000億ドル(約88兆円)の追加投資を行うことで、この関税免除を確保したと公表しました。トランプ氏は記者会見で、「アップルのような企業にとって朗報なのは、アメリカ国内で製造している、または製造すると明確に約束している場合、関税はかからないということだ」と述べ、アップルは「世界中で販売されるすべてのiPhoneとApple Watchに、ケンタッキー州製のカバーガラスが使用されることになる」と発表しました。

ソーシャルメディアを席巻した「嫌悪感」と非難の声

このようなアップルの戦略的対応は、国内製造業の復活を望む有権者には魅力的に映る一方で、ティム・クック氏の行動に対し、ソーシャルメディア上では強い嫌悪感が表明されました。X(旧Twitter)では、「これは、家族を殺されないよう金正恩に懇願するときにする事のよう見える。我々は今やそんな状況にあるのだろう」「ティム・クックは、プロ級のゴマすり方法を世界に示した」「気持ち悪い」「哀れ」など、クック氏の行動を憐れむ声や批判が多数投稿されました。ユーザーは、企業が政治的圧力に屈する姿に不満や失望を感じているようです。

ホワイトハウスでドナルド・トランプ元米大統領と会談するアップルCEOティム・クック氏。両氏は貿易政策や国内製造について意見交換を行った。ホワイトハウスでドナルド・トランプ元米大統領と会談するアップルCEOティム・クック氏。両氏は貿易政策や国内製造について意見交換を行った。

繰り返される「権力者への接近」:テック界CEOの歴史

ティム・クック氏が権力者に「ひざまずく」ような行動に出たテック界CEOは彼が初めてではありません。メタのマーク・ザッカーバーグ氏やアマゾン創業者のジェフ・ベゾス氏も、トランプ氏の第一次政権前後には批判的な発言をしていたにもかかわらず、再選後には自主的に会食を行うなど、政治的圧力と企業戦略のバランスを取る動きが見られました。クック氏自身も、以前からトランプ氏に贈り物をしています。2021年には、トランプ氏がホワイトハウスを去る前に約6000ドル(約88万円)相当のMacBook Proを贈呈したことが報じられています。

結論

ティム・クック氏によるドナルド・トランプ氏への「献上品」とアップルの国内製造への巨額投資は、企業が政治的・経済的圧力の中でいかにして自社の利益と社会的な信頼性を維持するかという、テック企業が直面する複雑な課題を浮き彫りにしました。この一連の出来事は、短期的なビジネス上の利益を追求する中で、企業倫理や世論の感情といかに向き合うべきかという議論を提起しています。

参考資料

  • ハフポストUS版