今年も「殺人メガ台風」が日本列島で猛威を振るう可能性が高まっています。すでに7月30日には中心気圧980ヘクトパスカル、最大瞬間風速30m/sの強力な台風8号が沖縄本島を通過し、中国に上陸。72時間で500ミリを超える豪雨をもたらし、洪水や土砂崩れで40人以上が犠牲となる未曽有の災害を引き起こしました。このような強力な台風の接近は、日本にとって喫緊の課題となっています。
昨年の台風10号が九州宮崎県に上陸し、強風で屋根が吹き飛ばされる甚大な被害の様子。気象災害の脅威を示す光景。
台風の接近数が平年の2倍以上に増加予測
日本気象協会は、今年8月から10月にかけて日本に接近する台風の数が最大で9個に達すると予測しています。これは平年約4個と比較すると、2倍以上もの増加です。なぜこれほど多くの台風が日本に接近する予測が出されているのでしょうか。気象予報士の村山貢司氏は、その理由を次のように解説しています。
「今年は日本の南海上にある太平洋高気圧が強く張り出しています。その高気圧に遮られる形で、台風が南海上で発生した後、日本海側へ抜けていくのが難しくなっており、例年よりも日本に接近しやすいルートができているのです。」
日本列島に停滞する台風が増加:偏西風北上が原因か
専門家が懸念するのは、接近数の増加だけではありません。上陸した台風が長期間にわたって日本に留まり続ける可能性が指摘されています。異常気象に詳しい三重大学生物資源学部教授の立花義裕氏は、この現象の主要因を「偏西風の北上」と分析します。
「通常、南海上で発生した台風は九州に上陸後、近畿地方を通過して北東方向へ去っていきます。しかし、今年は6月頃から続く猛暑の影響で、偏西風が例年よりも北に移動しているのです。偏西風が北上するということは、日本列島に上陸した台風が東に進路を変えるための風が無くなってしまうことを意味します。その結果、日本に接近し、かつ停滞する台風が増加する恐れがあります。」
この動向を象徴するケースとして、今年7月15日に北海道に上陸した台風5号が挙げられます。北海道への台風上陸は2016年の台風11号以来9年ぶりであり、近年は専門家ですら進路予測に頭を悩ませる状況が続いています。本来であれば台風被害とは無縁と考えられていた地域でも、もはや安心はできません。
昨年8月、台風5号による大雨で岩手県内の河川が氾濫し、水害が発生した現場の航空写真。気候変動による洪水リスクの増加。
海水温上昇と勢力維持:猛烈な台風上陸のリスク増大
今年の台風は、例年よりも日本の近海で発生する傾向も強まっています。台風はインド洋から東へ吹く季節風と、熱帯の海上から西へ吹く偏東風が衝突することで発生しますが、地球温暖化の影響により、これらの風が衝突する場所が北に移動しているためです。発生地点が日本に近くなることで、台風が強い勢力を維持したまま上陸するリスクが高まると懸念されています。
台風の勢力には、海水温の高さが大きく関係していると前出の立花氏は指摘します。
「海水温が高ければ高いほど、大量の水蒸気が蒸発し、巨大な雨雲が形成されやすくなります。そうした雨雲を台風が取り込みながら進むことで、雨や風の勢いが激しさを増していくのです。先日、私が東北地方の三陸沖へ調査に出向いた際、平年に比べて海水温が5~6℃も高いことが分かりました。」
東京都立大学特任教授の藤部文昭氏の研究によれば、海水温が1℃上昇するごとに、雨雲がもたらす1時間あたりの降水量が7~19%上昇すると報告されています。台風も同様に、海水温の上昇は降水量の増加を招き、洪水や土砂災害のリスクをさらに高めます。
8月から9月は特に厳重な警戒を
前出の村山氏は、今後の台風シーズンについて警鐘を鳴らしています。
「日本付近の海水温は、毎年9月頃にピークを迎えます。したがって、8月から9月にかけては猛烈な台風が日本に直撃する危険性が極めて高いでしょう。具体的には、家屋の倒壊や大規模な停電を引き起こす可能性のある、中心気圧970~950ヘクトパスカル程度の勢力の強い台風が複数上陸する可能性も否定できません。2004年に日本列島に10個もの台風が上陸し、『災害の年』と言われた状況が再び起こるかもしれません。」
「凶暴化」を続ける台風の連続上陸は、すでに目前に迫っており、日本全国で厳重な警戒と適切な防災対策が求められています。
参考文献
- FRIDAYデジタル: 「台風が“凶暴化”している」2025年8月22・29日合併号より. https://news.yahoo.co.jp/articles/91d8645443d679e38dda95d90f6b67f4e40ee440