TBS系「サンデーモーニング」に朝日新聞編集委員の高橋純子氏が出演し、先日当選した参議院議員さや氏(本名・塩入清香氏)の核武装に関する発言に対し、「国会議員であるなら口にすべきではない。顔を洗って出直してきていただきたい」と厳しく指摘しました。この発言は、核兵器を巡る日本の安全保障議論に新たな波紋を広げています。
参政党の塩入清香氏が核武装に関する発言で物議を醸す様子、2025年7月撮影
「サンデーモーニング」が提起した核議論の焦点
この日放送された「サンデーモーニング」の「風をよむ」コーナーでは、原爆投下から80年を迎える今年の国際社会における核兵器の動きと、各国が防衛費増額に迫られている現状がテーマとなりました。番組内では、毎日新聞が参院選当選者に行ったアンケート調査で、「核兵器を保有すべき」と回答した議員が8人いたことが伝えられました。内訳は、参政党から6人、自民党から1人、日本保守党から1人でした。
その中で、さや氏の映像が流され、「『核武装が最も安上がりで最も安全を強化する策の1つ』と主張した候補者が当選しています」というナレーションが入り、改めてさや氏の発言がクローズアップされました。この発言は、核保有の是非とコストという、日本の安全保障政策における極めて重要な論点に焦点を当てています。
核兵器保有の「コスト」と被爆者の声
番組はまた、核兵器を保有する9カ国が保有する核弾頭が1万2340発以上に上り、国際NGOの試算ではその維持管理に年間およそ14兆円もの費用がかかるという現状も伝えました。これに対し、8月6日に広島市で行われた平和記念式典での広島県の湯崎英彦知事の発言が報じられました。湯崎知事は、核保有のコストについて「年間14兆円超が投入されているといわれるが、その10分の1でも核のない新たな安全保障のあり方を構築するために、頭脳と資源を集中することこそが今、我々が力を入れるべきこと」と述べ、核兵器なき世界の実現に向けた具体的な資源投入の必要性を訴えました。
同コーナーには、広島での被爆体験を持つ元プロ野球選手の張本勲氏も同席し、自身の体験を語りました。キャスターの膳場貴子アナウンサーから「核兵器を容認するような空気が、一部でまた出てきていますけれど」と問われた張本氏は、「あなたの親族がそうなったら、それでもあなたは承諾するの? と問いたい」と、自身の体験に根ざした痛烈な問いかけを行いました。
国会議員としての発言の重みと波紋
張本氏の言葉を受けてコメントを求められた高橋純子氏は、「張本さんのお話を間近でうかがい、『核が安上がり』などと経済合理性の観点から口にするのは、幼稚かつ稚拙だなというふうに思います」と指摘。さらに「全国民を代表する国会議員であるならば、そういうことを口にすべきではないし、顔を洗って出直してきていただきたい、というふうに思います」と、さや氏の名前には直接言及しないながらも、その発言に対する強い非難を表明しました。
さや氏の当該発言は、参院選公示日の7月3日に配信されたインターネット番組でなされました。この中で、核保有や日米同盟のあり方について問われた際、「あの北朝鮮ですら、核兵器を保有すると国際社会の中でトランプ大統領と話ができるぐらいまでにはいく」「核武装が最も安上がりで最も安全を強化する策の1つ」と主張し、大きな波紋を広げました。8月1日の初登院の際、この発言について質問されると、さや氏は「参政党の方針に従うつもりです」と述べるに留め、発言を撤回するかどうかについては「党とのすり合わせが終わりましたら、ご報告させていただきたい」と曖昧な返答をしました。
結論
今回の高橋純子氏による厳しい指摘は、核兵器という極めて敏感なテーマにおいて、国会議員としての発言が持つ影響力の大きさを改めて浮き彫りにしました。核兵器の保有コストや、それがもたらす悲劇を知る被爆者の声を踏まえれば、「安上がり」という経済的視点のみで核武装を語ることの是非は、今後も日本の政治と社会において深く議論されるべき課題と言えるでしょう。国民の代表である国会議員の発言には、常にその内容と影響に対する責任が伴うことが求められています。
参考資料:
- TBS系「サンデーモーニング」
- 毎日新聞 参院選当選者アンケート
- 広島平和記念式典
- 日刊スポーツ