ガザ人質エヴィヤタル氏、骨と皮の「飢餓映像」で国際社会がハマス非難

パレスチナ・ガザ地区に拘束されているイスラエル人のイライ・ダヴィド氏は、8月4日のBBC取材で弟エヴィヤタル・ダヴィド氏(24)の悲惨な現状を訴えた。「弟はもはやガイコツだ。いつ死んでもおかしくないほど飢えさせられ、ひどい苦痛に耐えている」──この絶望的な言葉は、イスラム組織ハマスが公開した衝撃的な動画を受けて発された。国際社会は、映像が示す人道危機に対し強い懸念と非難の声を上げている。

ハマス公開映像が示す人質の悲惨な状況

8月2日、イスラム組織ハマスは、人質エヴィヤタル・ダヴィド氏(24)が痩せ細った姿で地下トンネルのような場所に拘束されている映像を公開。映像でエヴィヤタル氏は「数日間何も食べていない。飲み水も手に入らない」と飢餓を訴え、スコップで土を掘りながら「この穴は、僕が埋葬される場所だろう」「家族と共に自分のベッドで眠りたい」と涙ながらに語り、泣き崩れた。この衝撃的な映像を受け、赤十字国際委員会(ICRC)は「人質が命に関わる状況にある明確な証拠」であるとし、「愕然とした」と深い懸念を表明した。

ガザで拘束され、飢餓状態にあるイスラエル人質エヴィヤタル・ダヴィド氏の痩せ細った姿。生存への希望を訴える。ガザで拘束され、飢餓状態にあるイスラエル人質エヴィヤタル・ダヴィド氏の痩せ細った姿。生存への希望を訴える。

イスラエル政府と家族の強い抗議、ハマスの反論

イスラエルのベンヤミン・ネタニヤフ首相はICRCガザ支部の責任者と協議し、人質への即時食料・医療支援を強く要請。イスラエル指導者らは、エヴィヤタル氏の栄養失調状態はハマスに責任があるとして強く抗議した。兄イライ氏もBBCに対し、「新たな残虐行為だ」とハマスの行動を非難し、弟が「いつ死んでもおかしくないほど飢えさせられ、ひどい苦痛に耐えている」と訴えた。一方で、ハマスの軍事部門は「人質を意図的に飢えさせているわけではない」と反論している。

エヴィヤタル氏は、2023年10月17日のハマスによるイスラエル南部奇襲時、音楽フェスティバル「スーパーノヴァ」で拉致された一人。現在も49人のイスラエル人がガザに拘束され、うち27人は死亡とされているが、彼は生存者の一人である。

ガザの飢餓状況と人質問題の複雑な背景

ガザ地区全体で飢饉が進行しており、国連世界食糧計画(WFP)は7月29日、「紛争開始以来、人々の食料消費量と栄養摂取の指標が最悪レベルに達している」と警告した。しかし、ハマス公開動画では、ハマス側人物とエヴィヤタル氏の腕の太さが比較され、「彼が必要な食料を意図的に与えられていないのは明白だ」との指摘も多数上がる。

イスラエルとハマスの停戦交渉は難航し、合意に至らない状況が続く。このような膠着状態が続く限り、エヴィヤタル氏を含む人質たちの生命への危険は高まるばかりであり、ガザ地区全体の人道危機はさらに深刻化すると強く危惧されている。

エヴィヤタル・ダヴィド氏の映像は、ガザに拘束されているイスラエル人質が直面する絶望的な状況を鮮明に浮き彫りにした。国際社会はハマスに対し、人質への適切な対応と人道支援の確保を強く求めており、停戦交渉の早期合意が喫緊の課題となっている。この人道問題の解決なくして、ガザ地区の安定、ひいては中東地域全体の平和は望めないだろう。国際社会の継続的な努力が求められる。


参考文献

  • BBC News
  • 赤十字国際委員会 (ICRC)
  • 国連世界食糧計画 (WFP)
  • News-Post Seven
  • Yahoo!ニュース