映画『国宝』が描く歌舞伎の真髄:市川團十郎も絶賛、興行収入100億円への道

吉沢亮主演の映画『国宝』が、公開から2か月を経て、観客に深い感動を与え続けています。“今年最大の注目作”と称されるこの超大作は、芸道の奥深さと業を追求し、日本映画史にその名を刻む勢いで大ヒットを記録しています。国内実写映画としては異例の興行成績を叩き出し、映画界の新たな金字塔を打ち立てようとしています。

歌舞伎俳優・市川團十郎が映画『国宝』の魅力を語る様子歌舞伎俳優・市川團十郎が映画『国宝』の魅力を語る様子

驚異的な興行成績と『国宝』が覆した定説

『国宝』は、8月3日の時点で観客動員数600万人を超え、興行収入も85億円を突破しました。この数字は、国内実写映画の歴代興行成績トップ10入りを既に果たしていることを意味します。配給元の目標は、実写映画では過去に『南極物語』(1983年)や『踊る大捜査線 THE MOVIE』(1998年)などわずか3作品しか達成していない、興行収入100億円の大台到達です。

通常、上映時間が長い作品は、劇場の1日あたりの上映回数が減るため、興行収入面で不利とされています。しかし、『国宝』の上映時間は約3時間にも及びます。製作段階で「上映時間を短くしないと興行収入が上がらないのではないか」との意見もあったそうですが、本作は見事にこの定説を打ち破りました。効率が重視されがちな“タイムパフォーマンス”の時代に逆行しながらも、作品そのものの底力で大ヒットを成し遂げたのです。

市川團十郎の絶賛が後押しする映画の価値

業界関係者もその完成度に舌を巻く中、歌舞伎界の重鎮である市川團十郎(47才)が本作の“助っ人”として緊急参戦しました。自身のYouTubeチャンネルで『国宝』を絶賛したのです。團十郎は、歌舞伎界を代表する御曹司であり、将来的には「人間国宝」をも見据える存在です。彼の発信力は、作品のさらなる後押しとなっています。

原作者の吉田修一氏が3年間も歌舞伎の黒衣を経験して構築したという世界観は、映画でも見事に健在です。團十郎は、吉沢亮(31才)をはじめとする全キャストが「本気で歌舞伎と向き合っていた」と語り、特に横浜流星(28才)演じる名門の御曹司に自身の経験を重ね合わせて鑑賞したといいます。「彼のせりふが身にしみて『痛かった……』とまで語っていました」。映画から「歌舞伎の家に生まれたこと」と「歌舞伎の家に生まれずして『歌舞伎を愛する』ということ」の二つの側面を改めて考えさせられたそうで、自身の子供たちにも鑑賞させたところ「目の色を変えて帰ってきた」と喜びを語りました。

梨園からの確かな「お墨付き」を得て、『国宝』はまさに伝説となるべく快進撃を続けています。この映画は、単なるエンターテインメントの枠を超え、日本の伝統芸能である歌舞伎の魅力を現代に伝え、多くの人々に影響を与えていると言えるでしょう。


参考文献

  • 女性セブン2025年8月21・28日号