第107回全国高校野球選手権(甲子園)に出場予定だった広陵高校(広島)野球部が、過去の部内暴力事案とそれに伴うSNSでの情報拡散を受け、10日付けで出場を辞退したことが大きな波紋を広げています。弁護士の八代英輝氏は11日、TBS系「ひるおび」に出演し、この異例の事態が投げかける現代社会の課題、特にSNSの影響力について言及しました。
広陵高校は今年1月、寮内での暴力行為を認め、被害生徒への謝罪文書を公表。日本高野連は3月に厳重注意処分を下しましたが、今大会への出場判断に変更はないとしていました。しかし、7日の1回戦で旭川志峯(北北海道)に勝利した同日、日本高野連は元部員からの別事案に関する情報提供があったことを発表。学校側は「第三者委員会を設置して現在調査中」と説明していました。そして、14日の2回戦を控える中、SNS上での情報拡散が深刻化し、学校側が辞退を申し出、高野連と大会本部がこれを受理する事態に至りました。
八代英輝弁護士がひるおびで広陵高校問題にコメント
SNSが与えた影響と堀校長の証言
広陵高校を巡るSNSでの動きは、大会開幕前の5日から誹謗中傷や憶測に基づく投稿が一気に拡散するという異常な状況でした。10日に会見を開いた堀正和校長は、生徒の顔写真が拡散されたことや、野球部寮への「爆破予告」まであったことを明かし、SNSの暴走が学校運営と生徒の安全を脅かすレベルに達していたことを示唆しました。こうした状況が、学校側の出場辞退という重い決断を後押ししたと見られています。
八代英輝氏が指摘するSNSの両面性
八代弁護士は、今回の事態を「SNSのいい面と悪い面と、いろいろ交錯してしまった案件」と分析しました。彼は、寮への爆破予告や、野球部とは無関係な生徒が追いかけられ、罵声を浴びせられるなど、地域住民の安全まで脅かされる状況を「悪い面」として指摘。一方で、二つの事案における被害者とその保護者が、学校の対応に不満を抱え、その不満を公にする機会としてSNSが機能し、結果的に学校を動かし、情報開示につながった側面を「いい面」として評価しました。これは、SNSが隠蔽された問題を表面化させる力を持つことを示しています。
教育的課題と部員たちの心情
八代氏は、広陵高校側には「反省しなければならないところはたくさんある」としながらも、辞退を余儀なくされた野球部員たちの心情についても言及しました。彼は、学校側が「辞退した部員から何ら反論はなかった」と説明していることに対し、「恐らく部員たちも言いたいことはたくさんあると思う。そういったことを拾い上げるのも教育の役割だし、いろんな課題を残した」と私見を述べ、生徒たちの声に耳を傾ける重要性を強調しました。
堀校長は、出場辞退を受けた部員たちの様子を「子供たちは本当に姿勢が正しく、何も乱すことなく」「選手からは何一つ質問もなく、いつも通りきちっとしたあいさつで終わりました」と説明していますが、この「何も乱さない」という姿の裏に、どのような複雑な思いが隠されているのか、教育機関として深く考察すべき点が残されています。今回の広陵高校の出場辞退は、SNS時代の情報倫理、学校におけるガバナンス、そして生徒の心を守る教育のあり方について、私たちに重い問いを投げかけています。
参考資料
- Yahoo!ニュース: 広陵高校野球部の甲子園出場辞退に関する八代英輝氏のコメントを含む記事