カムチャツカ沖M8.8巨大地震と日本への津波影響:遠地津波の脅威を解説

202X年7月30日、ロシア極東カムチャツカ半島沖でマグニチュード(M)8.7(気象庁)または8.8(米地質調査所:USGS)の巨大地震が発生しました。震源はカムチャツカ半島南東部のペトロパブロフスク・カムチャツキーから東南東119キロメートルの沖合、深さ20.7キロメートルと比較的浅い場所です。この大規模な地震は、広範囲にわたり日本沿岸にも津波をもたらし、改めて遠地津波への警戒の重要性を示す出来事となりました。

地震のメカニズムと発生要因

今回の地震が発生した海域は、海側の太平洋プレートが陸側の北米プレートの下部へ、年間77ミリメートルという速さで西北西方向に沈み込んでいる「沈み込み帯」です。北米プレートは「千島・カムチャツカ弧」の北西側に位置しており、この地域の活発な地殻変動が巨大地震の要因となっています。地震のメカニズム解析によると、今回の地震はプレートの沈み込みに伴う「逆断層」型の「海溝型地震」と判明しました。長さ390キロメートル、幅140キロメートルの広大な領域が約8メートルもずれ動いたと推定されており、そのエネルギーの大きさがうかがえます。

カムチャツカ半島沖地震の震源地とプレート境界、日本列島への津波経路を示した地図カムチャツカ半島沖地震の震源地とプレート境界、日本列島への津波経路を示した地図

日本への広範囲な津波到達と避難指示

この巨大地震を受け、日本の気象庁は北海道や青森県から和歌山県にかけて津波警報を発表し、その他日本沿岸の広範囲に津波注意報を発令しました。これに伴い、各地の自治体では住民に避難指示などが発令され、厳重な警戒態勢が敷かれました。実際に、地震発生から約6時間後には岩手県久慈港で1.3メートルの津波が観測されたほか、北海道から沖縄に至るまで、広範囲で10~60センチメートルの津波が到達しました。また、鉄道の運休など、交通機関にも影響が広がりました。

カムチャツカ・千島弧における歴史的地震活動と遠地津波の特性

千島・カムチャツカ弧は、これまでも地震が頻繁に発生してきた地域です。過去100年間だけでもM6.5以上の地震が31回発生しており、今年7月20日に発生したM7.4の地震は、今回の大地震の「前震」と考えられています。特に記憶されるのは、1952年11月5日に今回の震源から東南東45キロメートルで発生した「カムチャツカ地震」と呼ばれるM9.0の巨大地震です。この地震は太平洋全域に壊滅的な津波をもたらし、日本にも到達し、三陸沿岸では最大3メートルの津波が観測されました。

何千キロメートルも離れた遠方で発生した地震によって引き起こされる津波は「遠地津波」と呼ばれます。遠く離れた場所で発生するため油断されがちですが、遠地津波には特徴的な挙動があります。すなわち、海底地形などの影響で複雑に反射・屈折しながら進むため、第1波、第2波と継続した後、最も大きな津波が遅れて到達する傾向があります。また、水面の上下が繰り返される津波の周期が非常に長く、時には1時間以上に及ぶこともあります。この特性を理解し、警報や注意報が解除されるまでは決して油断せず、避難行動を続けることが重要です。

今回のカムチャツカ沖巨大地震は、遠地で発生した地震であっても、その影響が広範囲に及び、日本沿岸にも大きな津波をもたらす可能性があることを改めて示しました。津波警報や注意報が発表された際には、たとえ揺れを感じなくても迅速な避難行動を取ることが、命を守る上で極めて重要です。


参考文献