奨学金返還支援制度が企業に広がる:従業員と企業双方のメリットとは?

バブル崩壊以降、奨学金返還は多くの若者にとって重い負担となり、社会問題として長く認識されてきました。このような状況の中、日本学生支援機構(JASSO)は返還制度を厳格化する一方で、新たな「奨学金返還支援制度」を制定し、その導入企業が急増しています。本稿では、この制度が奨学金を借りている学生や従業員、そして企業双方にどのような具体的なメリットをもたらすのか、その詳細を解説します。

奨学金問題の背景とJASSOの取り組み

大学進学率の上昇は多くの学びに機会を与えましたが、同時に奨学金利用者の急増を招きました。バブル崩壊後の経済状況や非正規雇用の増加は、若者の奨学金返還をさらに困難にしました。この問題に対応するため、2004年に設立されたJASSOは、奨学金の給付や貸与だけでなく、多様な返還支援策や救済策を提供しています。

具体的には、月々の支払額を減らしたり返還期間を延長する「減額返還制度」や「返還期限猶予制度」を拡充。所得が一定額以下であれば返還期限が猶予される「所得連動返還型無利子奨学金制度」も制定されました。さらに、2020年には返済不要な「給付型奨学金」も創設され、経済的な困難を抱える学生への支援を強化しています。その一方で、JASSOは設立以来、返済管理を年々厳格化しており、延滞者には延滞金を課し、長期延滞者を信用情報機関に登録するなどの措置を講じています。JASSOの奨学金を借りている大学生一人当たりの平均貸与総額は約330万円にも上り、その返還負担は依然として大きいのが現状です。

奨学金返還支援制度のイメージ、企業によるサポート奨学金返還支援制度のイメージ、企業によるサポート

企業導入が急増する「代理返還制度」の魅力

このような背景の中、2021年4月にJASSOが開始した「返還支援(代理返還)制度」は、奨学金の返済を抱える従業員だけでなく、導入企業にとっても大きなメリットがあるとして注目されています。この制度を利用することで、企業は従業員の奨学金をJASSOに直接支払うことが可能になります。

最大の魅力は、企業と従業員双方に税制上および社会保険料上の優遇措置が適用される点です。従業員は、所得税が増加することなく、社会保険料も低減されたまま奨学金を返済できるという経済的な恩恵を受けられます。一方、企業側も、福利厚生の一環として支払った奨学金の返済額を損益に計上できるため、法人税の負担軽減につながります。これは企業が優秀な人材を確保し、従業員の定着率を高めるための強力なインセンティブとなり、企業の社会的責任(CSR)を果たす上でも有効な手段と言えるでしょう。

まとめ

「奨学金返還支援制度」は、若者の経済的負担を軽減し、企業の福利厚生を充実させる画期的な制度です。この制度の普及は、奨学金返済に苦しむ人々への具体的な支援策となり、社会全体で若者の未来を支える新たな仕組みとして、その重要性は今後さらに増していくと予想されます。企業が積極的にこの制度を導入することは、従業員のエンゲージメント向上だけでなく、社会貢献という観点からも企業価値を高めることに繋がります。


参考文献:

  • JASSO「奨学金事業に関するデータ集」(令和7年度版)