ファスナー合流、SNSで賛否両論の嵐:高速道路の「新しい常識」と円滑な交通への道

高速道路や幹線道路の渋滞時、加速車線(合流車線)を終端まで使い切り、そこで本線に合流する方式は「ファスナー合流」と呼ばれます。この合流方法が、SNS上で賛否の激しい議論を巻き起こしており、その背景にはドライバー間の意識の差が存在します。果たして、この「ファスナー合流」は本当に正しい行為なのでしょうか。多くのドライバーが抱く疑問と、その答えに迫ります。

SNSで沸き起こる「ファスナー合流」賛否の嵐

あるSNSユーザーの「合流が終わる最後まで来てから合流しているのだが、何か間違っているのか」という投稿が、この議論の火付け役となりました。投稿には加速車線の終端で停車し、本線への合流タイミングを伺う様子の写真が添えられていました。この投稿に対し、500件を超えるコメントが殺到し、大きな論争へと発展しました。

批判派の声:「割り込み」か「ズル」か?

ファスナー合流に批判的なドライバーからは、「絶対入れないな俺なら」「私、こういう人入れない、意地でも」といった感情的な意見が見られます。彼らは合流される側の立場から、ファスナー合流するドライバーを「割り込み」や「ズル」とみなし、無遠慮で不快に感じるようです。また、「空気を読みましょう」「自分より前だった人の前に入るなんてモラルもない」など、明文化されていないドライバー間の「暗黙のルール」や「モラル」に反すると指摘する声も上がっています。

賛同派の声:「正しい運転」「常識」の主張

その一方で、「間違ってない」「正しい!」「当たり前です」と、ファスナー合流を強く支持するドライバーも多数存在します。「むしろ常識。これができない下手くそは運転しない方がいい」「正解です!わかってないドライバー多くて嫌ですよね」といった意見は、ファスナー合流が正しい運転方法であると認識していることを示しています。さらに、「絶対に入れさせないっていう人の心の狭さは何?」「『モラルが』とか『マナーが』とか言ってる人は臨機応変さに欠ける」など、感情論で運転すること自体が間違いであるという厳しい意見も見受けられます。

高速道路の加速車線末端で本線へ合流する車両のイメージ。スムーズな交通と渋滞緩和のために推奨される「ファスナー合流」の様子を示す。高速道路の加速車線末端で本線へ合流する車両のイメージ。スムーズな交通と渋滞緩和のために推奨される「ファスナー合流」の様子を示す。

NEXCOが推奨する「ファスナー合流」の真実

こうしたドライバー間の認識の隔たりがある中で、実際のところファスナー合流は推奨されるべき行為なのでしょうか。実はNEXCOをはじめとする各高速道路会社は、このファスナー合流を積極的に「推奨」しています。その背景には、実証実験によってその混雑緩和効果が明確に示されたという事実があります。

渋滞緩和効果の実証:NEXCO中日本の取り組み

NEXCO中日本 名古屋支社は、日常的に渋滞が発生する名神高速の合流ポイントで、加速車線の減少直前まで合流できないようラバーポールを実験的に設置しました。これは、半ば強制的に加速車線を終端まで使い切らせるための試みでした。その結果、交通量が横ばいであるにもかかわらず、渋滞による損失時間が約3割も減少したといい、2019年11月にその有効性が公表されました。

なぜ効果的なのか?交通の流れにおける利点

なぜファスナー合流が渋滞緩和に効果的なのでしょうか。ドライバーによっては加速車線に入るとすぐに本線へ移ろうとする人もいれば、終端ギリギリまで加速車線を使う人もいるなど、その使い方はまちまちです。この「人によって判断が異なる」状態が、結果として本線と加速車線の複数の地点で合流動作を生み出し、速度低下を招いて渋滞を悪化させてしまうのです。

一方、ファスナー合流では、合流する地点が加速車線の終端の一箇所に集約されます。これにより、停滞する場所が限定され、交通の流れがより予測可能かつスムーズになります。これは、多くの車線が一つにまとまる際にジッパーのように交互に合流することに似ているため、「ファスナー合流」と呼ばれるゆえんです。

「新しい常識」としての普及とドライバーの意識

現在、NEXCO各社や名古屋高速などでもファスナー合流が積極的に推奨されており、改良工事で加速車線をフルに使うよう案内標示が施工されるなど、徐々に「ドライバーの新たな常識」として広がりつつあります。しかし、今回のSNSでの議論が示すように、まだ全てのドライバーにそのメリットや推奨理由が十分に浸透しているとは言えません。完全な理解にはしばらく時間がかかると予想されます。

正しさの「振りかざし」は避けるべき

ファスナー合流が推奨される正しい行為であるとはいえ、「正論をふりかざす」ことは避けるべきです。正しいからといって「当然譲られるべきだ」という意識を持つことは、他のドライバーに不快な思いをさせる原因となり得ます。交通は「お互い様」の精神で成り立っています。譲ってくれたドライバーには感謝の心を、そして合流したい車がいれば積極的に進路を開けるなど、思いやりと譲り合いの心を持って運転することが、結果として円滑で安全な交通環境を築く上で最も大切であると言えるでしょう。

参考文献