「卒業証書」問題、伊東・田久保市長が百条委初出頭も真相解明進まず 橋下徹氏が「周辺事実の固め」を提言

静岡県伊東市の田久保真紀市長が、長らく物議を醸してきた自身の「卒業証書」の真偽を巡り、百条委員会に初めて出頭しました。予定を大幅に超過する2時間半に及ぶ審議が行われたものの、市長の学歴に関する核心部分の解明には具体的な進展が見られませんでした。この状況に対し、元大阪府知事で弁護士の橋下徹氏は、テレビ番組で百条委員会がとるべき調査戦略について具体的な提言を行いました。

市長、百条委員会で「卒業証書」巡る回答を拒否し自らの主張を展開

百条委員会において、田久保市長は「卒業証書」の提出を求められましたが、「刑事訴追の恐れがある」との理由で提出を再度拒否しました。また、大学在学の証人について問われると、「現在、大学の友人ほとんどに連絡が取れるため照会した。4年間在学したことに問題はないという結論に至った」と説明しました。さらに、「卒業できていないと誰かに話したか」という質問に対しては、「6月28日に卒業できていないと知った。それ以前に誰かに話したということはございません」と答弁しました。

市長は、以前に議長に対して「卒業証書」を「チラ見せした」と報じられた件についても言及。囲み取材に対し、「私の記録では、19.2秒提示した。『もっときちんと見せてください』『チラ見せでパタパタと閉じるのはやめてください』との会話の記録はない。19.2秒を提示したあとに、議長から『いいじゃん』というコメントをいただいている。事実関係としては以上でございます」と述べ、適切に提示したと主張しました。

静岡県伊東市の田久保真紀市長。卒業証書の真偽を巡る百条委員会に初出頭し、記者団の質問に応じる姿。静岡県伊東市の田久保真紀市長。卒業証書の真偽を巡る百条委員会に初出頭し、記者団の質問に応じる姿。

橋下徹弁護士が指摘する「周辺事実固め」の重要性

この百条委員会の審議状況に対し、橋下徹弁護士は、「市長が示した『卒業証書』は、同期入学の人物がお遊びで作った」とする新たな「告発文」にも触れつつ、委員会の調査方針について以下のように指摘しました。

「本人が『やっていません』というものを『うそでした』とは言わせられない。周辺の事実を固めに行くべきだ」と橋下氏は強調しました。彼は、裁判の世界においても、本人が否認している事案で「嘘でした、ごめんなさい」と自白させることは極めて困難であると説明。検察でもそれは不可能であり、本人が否認するならば、その「周辺の事実」を固めるのが常套手段であると述べました。

具体例として、「卒業証書を友達同士で作った」という告発があるならば、その告発者になんとか接触し、証言を得るべきだと提言。国会の参考人招致についても言及し、当事者を呼んで「嘘だと認めろ」と迫るやり方は、検察官でさえ難しい行為であり、議員がそれを行おうとすれば失敗に終わるとし、まずは周囲の証拠を固めることの重要性を説きました。

議会の「不信任」戦略と市長の「解散」権がはらむ諸刃の剣

また、橋下氏は議会の戦略として、市長に嘘を認めさせることではなく、百条委員会を開きながら不信任案へと繋げる選択肢については、「一つのやり方」と評価しました。

関西テレビの江口茂解説デスクは、市議会が「これ以上、田久保市長に続けてもらうわけにはいかない」と決断し、次の議会で不信任決議案を提出し、可決された場合の状況を解説しました。しかし、これは「諸刃の剣」であると指摘します。不信任が可決され市長が辞職・失職するパターンと、市長が議会を解散するパターンがあるためです。市長が議会を解散した場合、今度は議員が選挙を行わなければならず、市長選挙の費用が約3000万円であったのに対し、市議会議員選挙は人数も多く、より多額の費用がかかる見込みであると説明しました。

この問題は、市長の学歴の真偽だけでなく、地方政治における議会と首長の権力関係、そしてその進退が招く市民負担にも波及する複雑な様相を呈しています。今後の百条委員会の動き、そして市議会の判断が注目されます。


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