女優の浜木綿子(89才)が、自身にとって“最初で最後の本”と語る書籍『浜木綿子 楽しく波瀾万丈』を発売し、大きな注目を集めている。8月4日付の『毎日新聞』のインタビューでは、宝塚歌劇団時代の思い出から喜劇における演技の秘訣、そして発売されたばかりのこの新著について語られた。特に話題となっているのは、これまで多くを語られなかった家族、中でも愛息・香川照之や故・元夫である二代目市川猿翁との関係に深く切り込んだ内容だ。
浜木綿子、初の自叙伝『楽しく波瀾万丈』を手に笑顔を見せる
書籍刊行の背景:愛息・香川照之への母の深い慮り
宝塚の娘役トップスターとして輝かしいキャリアを築き、その後も女優として活躍し続けてきた浜木綿子。彼女にはこれまでも多くの出版社から執筆のオファーがあったが、その全てを断ってきたという。しかし、今回一転して書籍を上梓した背景には、愛息である俳優・香川照之(59才)を取り巻く環境の変化があったと、芸能関係者は語る。
「一時、香川さんは性加害報道を受けて多くのドラマやCMを降板せざるを得ない状況にありました。その間、浜さんにも取材が殺到しましたが、母として息子の問題には一切口を閉ざしていました。最近になり、香川さんに徐々に活動再開の兆しが見え始め、母としてようやく一安心できたことが、今回の執筆につながったのかもしれません。再び家庭内の問題に直面したことで、自身の波乱に満ちた半生と家族について『語っておきたい』という強い思いが湧いてきたのでしょう」
この書籍では、香川照之を筆頭に、これまで浜木綿子が公に触れることのなかった家族に多くの紙幅が割かれている。その中には、2年前にこの世を去った元夫、二代目市川猿翁さん(享年83)も含まれている。
元夫・市川猿翁との「恩讐を超えた」関係
ミュージカルでの共演がきっかけで知り合い、結婚に至った浜木綿子と二代目市川猿翁。しかし、猿翁さんが16才年上の別の女優に心を奪われ、結婚からわずか1年あまりで家を出てしまうという、浜にとっては辛い過去があった。猿翁さんが家を出てから2年後に離婚が成立。離婚がまだ一般的でなかった時代に、まだ幼い香川照之と共に置き去りにされた浜木綿子の心境は察するに余りある。
「一般的には、浜さんにとって猿翁さんは憎んでも憎みきれない相手かと思われるかもしれません。しかし、書籍ではその恩讐を超えた、複雑な感情が初めて明かされています」(別の芸能関係者)
60年前、市川猿翁(二代目)との結婚式でウェディングドレス姿の浜木綿子
父の形見と元夫の仏壇に秘められた真意
同書によると、浜木綿子の父親は三味線の長唄の名手であり、驚くべきことに市川猿翁もかつて彼女の父親から三味線の手ほどきを受けていたという。二人が故人となってしばらく経った頃、浜木綿子は自宅で父親が使っていた三味線の撥(ばち)を発見する。
「その撥を猿翁さんのお仏壇にお供えしてほしいと、浜さんが香川さんに頼んだと書籍に書かれています。離婚した元夫の仏壇に、自身の父親の大切な形見を並べてほしいと頼むなんて、香川さんもさぞ驚かれたことでしょう。浜さんは離婚時の心境を『恥ずかしいし、死にたいという気持ちになりました』と回顧していますが、それでも猿翁さんは彼女の生涯でたったひとりの『夫』だったのです。このエピソードを書き残したということは、胸の内に秘めていた愛憎が入り混じった複雑な思いを、息子である香川さんに伝えたかったのかもしれません」(前出・芸能関係者)
この一連のエピソードからうかがえる、浜木綿子の心に秘められた思いの深さは計り知れない。
参考文献
- 毎日新聞 2025年8月4日付インタビュー
- 女性セブン 2025年8月21・28日号
- 浜木綿子著『浜木綿子 楽しく波瀾万丈』 (出版社不明)