アメリカ・カリフォルニア州のギャビン・ニューサム知事は8月14日、テキサス州共和党が進める選挙区割り再編の動きに対抗するため、州の住民投票を行うと発表しました。この動きは、来る中間選挙に向けての連邦議会における議席争いを激化させるもので、アメリカ全土の政治情勢に大きな影響を与える可能性があります。
テキサス州の選挙区割り再編とカリフォルニアの対抗策の背景
テキサス州では、共和党議員が2026年の中間選挙を前に、連邦議会での共和党議席を5つ増やすことを目指し、選挙区割りの再編を進めています。これに対し、ニューサム知事が発表したのが「不正選挙対策法（Election Rigging Response Act）」という改正案です。
カリフォルニア州では現在、選挙区の区割りは独立した組織である「選挙区改定市民委員会」が管理しています。しかし、ニューサム知事の提案する改正案が住民投票で可決されれば、テキサス州などで民主党の議席を5つ減らすような選挙区割りが実施された場合、一時的に区割りの権限を同委員会から州議会に戻すことが可能になります。これにより、カリフォルニア州議会が選挙区の再編を担当し、州内の共和党議員を5人減らし、民主党議員を増やすことを目指すとされています。
ニューサム知事の「目を覚ませ」という強いメッセージ
ロサンゼルスの全米日系アメリカ人博物館で「不正選挙対策法」を発表するカリフォルニア州のギャビン・ニューサム知事
ニューサム知事は14日にロサンゼルスで行われた記者会見で、「今日はカリフォルニア州の解放の日だ」と述べ、自身の計画の重要性を強調しました。さらに、カリフォルニア州の象徴であるクマに触れ、「ドナルド・トランプ、あなたはクマをつついた。我々は反撃する」と述べ、強い対決姿勢を示しました。彼は、「私たちは一方的に武装解除して、アメリカ中の選挙区ごとに民主主義が消えていくのを見過ごすわけにはいかない」と、選挙区割りの再編が民主主義を守るために不可欠であると訴えました。
同日、ニューサム知事の記者会見場の近くで、連邦移民局捜査官による移民取り締まりが実施されました。これに対しニューサム知事は「これは偶然だと思いますか？」と問いかけ、「アメリカよ、目を覚ましてください。これは重大な局面です。恐怖と不安に対して目を覚まさなければならない」と、現在の政治情勢の緊迫感を強調しました。
「不正選挙対策法」住民投票の行方と各党の反応
ニューサム知事の記者会見中に全米日系アメリカ人博物館の外に配備された税関・国境取締局の部隊
この「不正選挙対策法」が住民投票で可決されるには、過半数の賛成票が必要です。ポリティコが14日に発表した世論調査によると、選挙区割りの権限を州議会に戻すことを支持する州民はわずか36％にとどまり、大半が現状の「選挙区改定市民委員会」が権限を維持することを望んでいることが示されました。
しかし、「選挙区改定市民委員会」のサラ・サドワニ委員自身は、テキサス州などで共和党が行う特定の政党に有利な選挙区割りの「ゲリマンダー」を「民主主義への重大な脅威」と位置づけ、ニューサム知事の計画を支持するよう有権者に訴えています。サドワニ委員は、これが「カリフォルニア州がこれまで続けてきた優れた取り組みを、一時的に脇に置くこと」ではあるものの、「あくまで今回限りのことであり、カリフォルニア州民の意思を損なうものではない」と説明しました。
一方、共和党は今回の住民投票を「2028年の大統領選に立候補しようとするニューサム氏の野心的な行動を後押しするものだ」と強く非難しています。全米共和党選挙運動委員会のクリスチャン・マルティネス報道官は、「ニューサムはカリフォルニア州憲法を切り刻み、民主主義を踏みにじるだろう」と述べ、「カリフォルニア州民を二の次にして、権力だけを最優先する皮肉で自分勝手な戦略を実行している」と批判しました。
テキサス州の民主党議員団は、共和党の選挙区割り案に抗議して州を離れていましたが、州議会が15日に閉会すれば戻る準備ができていると発表しました。テキサス州下院の民主党議員団代表ジーン・ウー氏は、「トランプはテキサス州を簡単に思い通りにできると考えていたが、民主党は猛然と反撃し、アメリカ全土で戦いを繰り広げている」と述べ、投票権を守る戦いを継続する意思を示しました。
結び
今回のカリフォルニア州とテキサス州の選挙区割りを巡る攻防は、アメリカ政治における党派間の深い対立と、民主主義の根幹である投票権を巡る綱引きを象徴しています。ニューサム知事の住民投票案は、単なる州レベルの政策を超え、アメリカ全体の政治バランスに影響を及ぼす可能性を秘めており、今後の動向が注目されます。
参考文献:
- ハフポストUS版の記事を翻訳しました。
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