映画『国宝』大ヒット記念!京都「聖地巡礼」で巡るロケ地と歌舞伎の魅力

任侠の世界に生を受けた主人公・喜久雄が、歌舞伎の舞台で才能を開花させ、「人間国宝」へと上り詰める波瀾万丈の半生を描いた映画『国宝』。公開以来、興行収入は133億円を突破し、連日大きな話題を呼んでいます。この傑作の感動をさらに深めるため、今回は、作品の魅力あふれる世界観を育んだ京都のロケ地を巡る「聖地巡礼」へとご案内しましょう。京都の地がどのように映画の世界を彩っているのか、ぜひご体験ください。

映画『国宝』の軌跡:世界が注目する傑作へ

李相日監督による映画『国宝』は、175分という長尺にもかかわらず、観客を瞬く間に物語の世界へと引き込みます。「その才能が、血筋を凌駕する」というキャッチコピーが示す通り、才能と血筋の相克という深いテーマが描かれています。2025年3月に開催される第98回米アカデミー賞「国際長編映画賞」部門の日本代表作品に選出され、北米公開も決定するなど、その評価は国内にとどまらず、世界へと広がりを見せています。京都では、新京極のMOVIX京都などで、6月6日の公開から3カ月以上にわたるロングラン上映が続いており、まだご覧になっていない方にもぜひお勧めしたい作品です。

豪華キャストが織りなす「人間国宝」への道と歌舞伎の魂

本作では、魅力的な登場人物たちが織りなす人間ドラマも大きな見どころです。吉沢亮が演じる主人公・喜久雄は、長崎の任侠の家に生まれながら、類いまれなる歌舞伎の才能を見出され、厳しい修行の世界へ飛び込みます。一方、横浜流星演じる俊介は、歌舞伎の名門に生まれ、その血筋を受け継ぐ御曹司。この対照的な二人の運命を、俊介の父役である渡辺謙、そして梨園出身の母役・寺島しのぶが深く見つめます。

さらに、芸の力のみで当代随一の歌舞伎役者へと上り詰めた万菊を演じる田中泯の存在感は圧倒的です。椅子に腰かけた姿から放たれる“体幹力”は、「人間国宝」坂東玉三郎を彷彿とさせ、一見の価値があります。本作で歌舞伎の演技指導を務め、自身も役者として出演した四代目中村鴈治郎は、「人間国宝」四代目坂田藤十郎を父に持つ上方歌舞伎の第一人者であり、その指導が作品に深いリアリティをもたらしています。

観客と役者の視点で描く歌舞伎の舞台裏とその魅力

映画『国宝』の特筆すべき演出の一つは、歌舞伎の舞台を多角的な視点から描いている点です。息をのむほどに絢爛豪華な舞台を「観客席から眺める」視点がある一方で、舞台裏の緊迫した様子や、緞帳が開き満員の観客がこちらを「観ている」という「役者の視点」も巧みに織り交ぜられています。これにより、観客は舞台へ向かう役者の緊張感や、まさに幕が上がる瞬間の高揚感を全身で体感することができます。喜久雄が50年の時を駆け、頂点へと上り詰める姿に寄り添いながら、その波瀾万丈の哀しみや喜びを共有することで、これまでにない鮮やかな感動と景色を感じさせてもらえます。

『曽根崎心中』『道成寺』『鷺娘』といった日本を代表する有名演目のハイライトシーンが随所に散りばめられているのも、この作品が観る者を惹きつけてやまない理由でしょう。兄弟のように育った京劇役者を描いた名作『さらば、わが愛 覇王別姫』と雰囲気が似ているという声も聞かれ、長く語り継がれる傑作となる予感に満ちています。

『国宝』と京都:歌舞伎の「聖地」を巡る特別な体験

「血脈(けちみゃく)」と芸の相克、そして「人間国宝」や「上方歌舞伎」といった要素に満ちた映画『国宝』は、まさに京都の文化が息づく作品と言えます。関西エリアを中心に多くのロケが行われましたが、特に京都には「聖地」と呼ぶにふさわしい場所が数多く存在します。映画の感動を二倍、三倍にも深めることができる聖地巡礼の散歩は、特別な体験となるでしょう。

歌舞伎演目のクライマックスシーンが撮影された京都・南座の堂々たる外観歌舞伎演目のクライマックスシーンが撮影された京都・南座の堂々たる外観

映画『国宝』のクライマックスシーンが撮影された場所の一つが、鴨川のほとりに位置する歴史ある南座です。日本の歌舞伎発祥の地ともいわれる京都で、伝統と格式を誇る南座の舞台は、喜久雄の芸の集大成を象徴する重要な背景となりました。

映画『国宝』が誘う、深く豊かな京都体験

映画『国宝』は、歌舞伎という伝統芸能の奥深さ、そして人間の才能と運命のドラマを見事に描き出しました。その感動的な物語は、豪華キャスト陣の熱演と、京都の歴史ある風景が一体となることで、より一層観客の心に深く響きます。大ヒットとアカデミー賞ノミネートという快挙を成し遂げた今、映画の舞台となった京都を訪れ、登場人物たちが歩んだ道のりを辿る「聖地巡礼」は、作品への理解を深め、忘れられない体験となるでしょう。ぜひこの機会に、映画『国宝』が織りなす歌舞伎と京都の魅力に触れてみてください。

参照元: Yahoo!ニュース / ダイヤモンド・ライフ編集部