元モーニング娘。で歌手・タレントの道重さゆみ(36)が14日、東京・Zepp Diver Cityでのラストライブを終え、芸能界を引退しました。2003年1月19日にモーニング娘。6期生として加入して以来、活動休止期間を含め8243日にわたる長いキャリア。「劣化しないアイドル」という独自の哲学を貫き通した道重は、約2500人収容の会場で集まったファンに別れを告げ、そのアイドル人生に幕を下ろしました。
Zepp Diver Cityでのラストステージを終えた道重さゆみ
ライブの熱狂とファンへの想い
午後7時に始まったツアー「SAYUMINGLANDOLL〜SAMSALA〜」の千秋楽公演は、約2時間半にわたり熱気に包まれました。今年1月19日に自身のブログで「今夏のライブで引退」を発表して以降、このラストライブは大きな注目を集めていました。会場には「最幸道重」「道重相愛」といったメッセージが記されたピンクのTシャツを着用した大勢のファンが集結。道重は取材メディアを入れず、別れを惜しむファンを楽しませることに全力を注ぎ、最後の瞬間までファンとの絆を大切にしました。
ピンクのTシャツを着用し、道重さゆみのツアー最終公演開場を待つファン
輝かしいアイドル人生の歩み
モーニング娘。加入から「伝説の6期」へ
道重は1989年7月13日に山口県宇部市で生まれました。2003年1月19日、13歳でモーニング娘。に6期生として加入。歌唱やダンスの経験はなかったものの、約1万4000人の応募者の中からオーディションを勝ち抜き、亀井絵里、田中れいなと共に選ばれました。さらにソロ歌手だった藤本美貴も同時期にグループに合流し、この4人は後に「伝説の6期」と称されることになります。
唯一無二のキャラクター確立とリーダー就任
加入当初、他の3人に比べてパフォーマンス力で遅れを取り、目立たない存在だった道重。しかし、2006年頃から「毒舌アイドル」という独自のキャラクターを確立し、「私が一番かわいい」という自己肯定感に満ちた発言が視聴者に受け入れられ始めました。個人でバラエティー番組に出演する機会も増えましたが、当時の彼女は「今のモーニング娘。をもっと知ってもらいたい」という強い意識を持って活動を続けていました。そして、2012年5月には新垣里沙の卒業を受けて8代目リーダーに就任。2014年11月26日の横浜アリーナ公演をもってモーニング娘。を卒業し、当時の在籍最長記録である4329日を樹立しました(後に生田衣梨奈が5302日に更新)。
休業期間と「常にピーク」の哲学
モーニング娘。卒業後は2年間の休業期間を経て、2017年3月から活動を再開。ライブ活動を中心に据え、30歳を迎えた際には「10代はかわいい。20代は超かわいい。30代は超超かわいい。劣化という言葉は私にはないんです。常にピークです。だから、今までで今日が一番かわいいんですよ」と公言し、その「劣化しないアイドル」としての信念を貫き続けました。
引退決断の背景:「強迫性障害」との向き合い
しかし、2023年12月27日、所属事務所は道重の活動に制限があることを発表しました。「強迫性障害」のため一部の活動が難しくなっていると説明され、経緯については「いくつか特定の仕事上で過度なこだわりや過敏な行動があり、本人から強い不安感や恐怖心があるとの申し出がありました。そのため、病院で診察を受けたところ、医師から『強迫性障害』との診断を受けました」と明かされました。
ファンへの感謝と未来へのメッセージ
そして今年1月19日、道重自身がブログを更新し、今夏のコンサートツアーをもって芸能界を引退する決意を公表しました。主な理由として「強迫性障害」を挙げ、「今まで出来ていた仕事の中に、もうできないかもしれないと思う事も増えてきました。そんな中で活動を続けていくのは、難しい、限界だな、と感じるようになり、会社にもその都度、相談させていただいていました。そして、今回、この決断をさせていただきました」と胸の内を正直につづりました。
その上で、「芸能生活22年、私のそばにはいつも、ファンの方がいてくれました。心から、感謝の気持ちでいっぱいです。本当にありがとうございます」と長年の支えへの感謝を記し、「夏のコンサートツアーまで約半年、今、私にできることを精一杯し、感謝の気持ちを届けたいと思っています。そして、勝手ではありますが、大好きなファンの皆さんとたくさん笑い、楽しく過ごしたいです。最後まで、どうか、宜しくお願い致します」とファンに呼びかけました。
道重さゆみは、約22年にわたる芸能活動に終止符を打ちましたが、彼女が残した「劣化しないアイドル」という哲学と、ファンとの深い絆は、多くの人々の記憶に残り続けることでしょう。
ENCOUNT編集部