ドナルド・トランプ米大統領は13日、首都ワシントンD.C.の警察を治安対策名目で連邦管理下に置く措置の「長期延長」を議会に要請する考えを表明しました。これに対し、ワシントンD.C.のバウザー市長(民主党)は「権威主義的」だと強く批判。都市部を政治基盤とする民主党側と、警察力の強化・掌握を図る共和党およびトランプ氏との間で、首都警察の管轄権を巡る対立が激化するのは避けられない見通しです。
ワシントンD.C.警察の連邦管理長期化を要請するドナルド・トランプ米大統領。
連邦管理の背景と延長の動き
ワシントンD.C.は州ではなく、その自治権限は連邦法で定められています。この規定により、大統領は議会への通告のみで、最長30日間、警察を緊急的に連邦管理下に置くことが可能です。トランプ大統領は記者会見で、「30日では足りない」と述べ、この措置の長期延長を議会に求めるとしました。延長期間の詳細は現時点では不明ですが、現在の議会は共和党が上下両院で多数派を占めているため、承認される公算が大きいと見られています。
治安状況を巡る認識の隔たり
首都警察の統計データによると、ワシントンD.C.の治安状況は改善傾向にあり、2024年に報告された人口10万人当たりの暴力犯罪件数は、2010年の半分以下に減少しています。しかし、トランプ大統領はこの統計について、「すべての統計チャートは偽造されている。実際にはここ20年で最悪だ」と主張しました。大統領はワシントンD.C.を「犯罪のない都市」にすると宣言し、落書きやホームレスの人々を「一掃」することで、「世界で最も美しい首都を取り戻す」と語っています。
自治権擁護と権限争いの予兆
民主党側からは、トランプ大統領が達成不可能な目標を掲げることで、首都警察への連邦支配を固定化しようとしているのではないかという疑念が持ち上がっています。バウザー市長は12日、治安維持において政権側と協力する姿勢を示しつつも、「ワシントンD.C.の自治を守らなくてはならない」と強く訴えました。
米紙ワシントン・ポストの報道によると、連邦管理という異例の事態の中、首都警察のスミス局長は組織運営の主導権を維持するための検討を進めている模様です。一方、ホワイトハウスは、首都警察に対する直接の指揮権は司法省傘下の麻薬取締局(DEA)のコール局長に属すると主張しており、今後、この権限を巡る綱引きが激化することが予想されます。
結び
トランプ大統領によるワシントンD.C.警察の連邦管理長期化要請は、首都の治安問題へのアプローチだけでなく、連邦政府と地方自治体の権限、特に民主主義の根幹をなす自治権のあり方を巡る深刻な対立を浮き彫りにしています。今後の議会の動向と、ホワイトハウス、首都D.C.政府、そして首都警察内部の動きが注目されます。
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