静岡県伊東市の田久保真紀市長は、市議会に対し、東洋大学の名誉回復と謝罪を求める抗議文を提出しました。これは、市長自身の学歴詐称疑惑に端を発した騒動の中で、当事者である市長が市議会に対し大学への謝罪を要求するという、極めて異例の事態です。市長は、百条委員会での市議の発言を問題視しており、この動きは経歴詐称問題をさらに複雑な様相へと導いています。
百条委員会における市議の発言が問題視される背景
議長室に現れた田久保市長は、険しい表情で抗議文を手渡しました。市長が問題視したのは、市議会が設置した百条委員会における市議会議員の発言です。特に、「東洋大学に対して悪の組織というような看過できない発言がありました。大変困りますので、これは議会としてしっかりと対応していただきたい」と述べ、大学への謝罪と名誉回復を強く求めました。
その発端となったのは、13日に開かれた委員会での四宮和彦市議と田久保市長のやり取りです。四宮市議は、田久保市長が東洋大学を除籍となった理由を繰り返し追及しました。東洋大学では、単位が足りない学生に対して年間2回の面接を行うことが定められていることから、「指導や注意が一度もなかったのか」と田久保市長に詰め寄りました。しかし、市長は「申し訳ないのですが、そのような記憶のほうは今のところ記憶としてはございません」と回答し、具体的な指導の記憶がないことを示唆しました。
伊東市長が市議会に東洋大学への謝罪と名誉回復を求める抗議文を手渡す様子
市長と市議の議論、食い違う見解
指導がなかったにもかかわらず大学の責任を問わないのか、と四宮市議が重ねて質問すると、田久保市長は「私としては大学そのものは非常に思い出もありますし、私なりの愛着もございますし大切な学び舎(や)でもございます。突然の訴訟とか大学に責任があるのにおかしいじゃないかとか、そういった姿勢で、はなから話をするつもりはございませんで」と回答しました。自身の経歴詐称疑惑にもかかわらず、大学に対する深い愛着を示し、訴訟などで責任を追及する意向がないことを明らかにしました。
このかみ合わない市長の答えに業を煮やした四宮市議は、「もはや田久保市長個人の問題ではないのです。伊東市民全員が巻き込まれているのですよ、東洋大学のせいで。だから、もはや今こうなっては東洋大学は悪の組織と言っていいくらい、東洋大学の責任を追及するのが市長の義務、決着をつけるべきだと考えますけれども」と発言しました。市民全体を巻き込む問題として、東洋大学の責任を追及すべきだと強く主張したのです。
これに対し、田久保市長は「確かに、そのように言っていただけるのは私としては非常にありがたいことであると思うのですが。重ねて申し上げます通り、私のほうとしては私の不徳の致すところで、ご迷惑を皆さんにお掛けしているという部分もございます」と返答しました。この時点では、四宮市議の「東洋大学は悪の組織」という発言に対し、「ありがたいこと」だと述べていた田久保市長ですが、翌日には一転して、市議会に東洋大学への謝罪を求めるに至ったものです。この経緯は、学歴詐称問題の根深く複雑な側面を浮き彫りにしています。
結論
伊東市の田久保市長が市議会に対し、東洋大学への謝罪と名誉回復を求めるという今回の異例の要求は、市長の学歴詐称疑惑に端を発した騒動が新たな局面に入ったことを示しています。百条委員会での市議の発言が「侮辱的」と問題視されたことで、本来市長の経歴に関する追及の場であった委員会が、今度は大学の名誉回復という別の論点に焦点が移りつつあります。この展開は、伊東市政と市民の間で、透明性と説明責任のあり方について、さらなる議論を巻き起こす可能性があります。今後の市議会の対応と、この問題がどのような決着を見るのか、引き続き注目されます。
参考文献:
- Yahoo!ニュース: 「東洋大学に謝罪を」静岡・伊東市長が市議会に要求 “侮辱的発言”で (引用元リンク)