尹錫悦(ユン・ソクヨル)大統領は15日、第80周年光復節(日本の植民地支配からの解放)の祝辞において、日本との「未来志向的な共生協力の道」を模索する姿勢を示しました。同時に、日韓間の歴史問題に対しては、「日本政府には、過去のつらい歴史を直視し、両国間の信頼が損なわれることのないよう努力してくれることを期待する」と述べました。この発言は、23~24日に予定されている日韓首脳会談を前に、日本への融和的なメッセージとして注目されています。
「未来志向」と「重要なパートナー」としての日本
尹大統領はこの日午前、ソウル鍾路区(チョンノグ)の世宗文化会館で行われた第80周年光復節慶祝式で、日韓関係に関する自身の考えと政策の方向性を明言しました。大統領はまず、「過去を直視する一方で、未来へと向かう知恵を発揮すべき時」であると強調。その上で、「日本は庭を共に使う私たちの隣人であり、経済発展において切り離して考えられない重要なパートナー」だと述べました。
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第80周年光復節記念式典で演説する尹錫悦大統領]
この発言は、過去よりも未来を重視し、日本との連携を通じて経済発展に注力するという尹大統領の考えを示すものです。これは、大統領就任後一貫して示してきた実用主義的な対日関係基調が反映されたものであり、先月30日に菅義偉元首相と会談した際にも、「日韓両国は同じ前庭を使う隣家のような関係」として、「相互に助けとなる未来志向的関係へと発展していくことを希望する」と述べていました。
歴史問題への言及と「信頼」の重要性
歴史問題に関しては、尹大統領は具体的な事件に言及することなく、「日本の努力を期待する」という考えを表明しました。大統領は、「信頼が厚いほど協力の質も高まるもの」であるとし、「日本政府には、過去のつらい歴史を直視し、両国間の信頼が損なわれることのないよう努力してくれることを期待する」と述べました。これは、来週行われる日韓首脳会談において、両国間の信頼を損なわない範囲で、日本政府に歴史問題に対する誠意ある対応を求める意味合いがあると解釈されています。
また、尹大統領は、「私たちのそばには今も過去の問題で苦しんでいる方々が多くおられる。立場を異にする確執も大きく存在する」と述べつつも、「日韓両国は真の隣人になれるという希望を捨てなかった先烈たちの切実な願いを継いでいかなければならない」と語りました。これは、歴史問題を認めながらも、両国の友好的な関係が優先されるという尹大統領の実用的な対日関係認識を反映した発言とみられます。
文在寅政権との比較と市民団体の見解
今回の尹大統領の光復節祝辞は、過去の文在寅(ムン・ジェイン)元大統領政権と比べると、かなり「融和的」なトーンであると評価されています。文元大統領は就任初年度の2017年の光復節祝辞で、日韓間の歴史問題における最大の懸案である日本軍「慰安婦」問題と日帝強占期の強制動員問題の双方に明確に言及し、日本側の謝罪と解決を強く求めていました。文元大統領は当時の祝辞で、「日帝強占期の強制動員の苦しみは続いている」とし、被害者の名誉回復と補償、真実究明、再発防止の約束の必要性を主張していました。
これに対し、主に歴史問題に取り組む市民団体からは、尹大統領の祝辞について「対日歴史原則がはっきりしていないのは残念な部分」との指摘が出ています。民族問題研究所のキム・ヨンファン対外協力室長は、「光復80年にふさわしい明確な対日歴史原則は提示されなかった」と述べ、日韓首脳会談で「歴史問題の解決なしには両国が真の未来志向的な関係を作ることは難しい」という明確な原則が提示されることを希望する、との見解を示しました。
参考文献
- 韓国大統領室写真記者団
- Source link: https://news.yahoo.co.jp/articles/416a850a0ed1c8058cc34be8de11b8fc509c815c