富士吉田市:オーバーツーリズムと富士山入山規制で揺れる観光地の今

山梨県富士吉田市は、霊峰富士の麓に広がる街として古くから富士登山の拠点となり、硬くてコシのある「吉田うどん」でも知られています。近年、この街は新たな注目を集めています。一つは2025年1月から3月に放送されたドラマ『ホットスポット』(日本テレビ系列)のロケ地となったこと、そしてもう一つは、外国人観光客の急増によるオーバーツーリズム問題です。ホットな話題の中心にある富士吉田市の現状を探ります。

「富士山コンビニ」問題から見る観光地の変化

富士吉田市では、かつて「富士山コンビニ」として外国人観光客が殺到したローソンがありました。この場所は、富士山を背景にコンビニが写る特徴的な写真がSNSで拡散されたことで一躍有名になりました。しかし、観光客による迷惑行為が横行し、市は景観保護と安全確保のため、2024年5月に目隠しフェンスを設置するに至りました。これは、外国人観光客の増加がもたらす光と影を象徴する出来事として、広く報じられました。

富士吉田市の「富士山コンビニ」に殺到する外国人観光客と背景にそびえる富士山富士吉田市の「富士山コンビニ」に殺到する外国人観光客と背景にそびえる富士山

富士山吉田ルートの入山者と外国人比率の推移

環境省は、富士山の4つの主要登山ルート(吉田ルート、須走ルート、御殿場ルート、富士宮ルート)に赤外線カウンターを設置し、詳細な登山者数調査を実施しています。中でも富士吉田市側の「吉田ルート」は、山開きが最も早い7月1日で、1日あたりの登山者数が最多の2000〜3000人に上ります。

特に注目すべきは、吉田ルートにおける外国人登山者の比率です。2015年には約21%だったものが、2024年の調査では約42%にまで急上昇したと報告されています。下山者へのアンケート調査によると、吉田ルートを利用した外国人の国籍は約50カ国に及び、その中でも台湾からの来訪者が最も多かったとされています。

2025年からの富士山入山規制の詳細

外国人観光客の増加に伴う環境負荷や安全性の懸念から、2025年からは吉田ルートで本格的な入山規制が導入されます。具体的には、入山料が4000円に設定され、1日あたりの人数規制は4000人となります。また、時間制限も設けられ、いわゆる「弾丸登山」と呼ばれる、夜間から早朝にかけて一気に山頂を目指す無謀な登山を防止する対策も強化されます。2024年の吉田ルートの入山者が約11万5000人であったことを考えると、この新しい規制が今シーズンの登山者数にどのような影響を与えるか、大きな関心が寄せられています。

アクセスの利便性が招く観光客集中

吉田ルートへの外国人観光客の集中は、そのアクセスの良さも大きな要因として挙げられます。東京から吉田口の富士山五合目まで直通バスが運行していることや、鉄道でのアクセスも非常に便利です。鉄道を利用する場合、富士山麓電気鉄道(旧富士急行)に乗車し、2011年に「富士吉田駅」から改称された「富士山駅」で下車することができます。これらの交通網が、国内外からの観光客を富士吉田市へと誘引しているのです。

まとめ

富士吉田市は、ドラマのロケ地としての魅力に加え、オーバーツーリズム問題という喫緊の課題に直面しています。特に富士山吉田ルートにおける外国人観光客の急増は顕著であり、これに対応するため2025年からの新たな入山規制が導入されます。この規制が富士山の自然保護と登山者の安全確保にどのように寄与し、地域の観光にどのような変化をもたらすのか、今後の動向が注目されます。