米露首脳会談:プーチン大統領、「外交的勝利」で関係改善と時間稼ぎ

米アラスカ州アンカレジで15日に開催された米露首脳会談後の共同記者会見では、ドナルド・トランプ米大統領とロシアのウラジーミル・プーチン大統領双方が、良好な関係を強くアピールしました。しかし、ロシア側がウクライナ侵略を巡り大幅な譲歩をした可能性は低いと見られており、プーチン氏にとって「外交的勝利」との見方が強まっています。国際社会におけるロシアの孤立が続く中、今回の会談はプーチン氏が国際的な舞台での存在感を再確認し、制裁回避のための時間稼ぎに成功した可能性を浮き彫りにしています。

関係改善への期待とウクライナ問題の根源

共同記者会見でプーチン大統領は、近年の米露関係の悪化を認めつつ、「今日の『合意』がウクライナ問題の解決だけでなく、ロシアと米国の実務的な関係の修復の出発点となることを期待する」と発言しました。この「合意」の具体的な内容は不明ながらも、トランプ氏との関係改善の認識を共有したと推測されます。ウクライナ侵略開始以来、約3年半にわたり国際的な孤立を深めてきたロシアは、プーチン氏自身も戦争犯罪の容疑で国際刑事裁判所(ICC)から逮捕状が出されている状況にあります。

しかし、今回の会談は、停戦実現を急ぐトランプ氏の招きに応じる形で約10年ぶりの訪米を実現させたものです。トランプ氏と並んで臨んだ共同記者会見では、プーチン氏はウクライナ侵略に繋がった「根本原因」を除去する必要性を改めて強調し、ウクライナの北大西洋条約機構(NATO)非加盟といった従来の要求に変更がない姿勢を示しました。

米アラスカ州アンカレジでの米露首脳会談で握手するトランプ大統領とプーチン大統領米アラスカ州アンカレジでの米露首脳会談で握手するトランプ大統領とプーチン大統領

トランプ氏への称賛と会談評価

プーチン大統領は会談中、トランプ氏の自尊心を巧みにくすぐる場面も見られました。記者会見でトランプ氏の過去の発言、「もし私が大統領だったなら、ウクライナの戦争は起こらなかっただろう」に触れ、「私はその通りだと確信している」と持ち上げました。

これに対し、トランプ氏は直後の米FOXニュースのインタビューで、「『あなたが大統領だったら起きなかった』とプーチン氏が言うのを聞いてうれしかった」と述べ、会談についても「10点満点だった」と高く評価しました。

制裁回避と時間稼ぎの成功

トランプ氏はこれまで、停戦に応じないプーチン氏への不満を表明し、ロシアを標的とした「二次関税」の発動を示唆していました。しかし、今回の記者会見ではそのことに触れることはありませんでした。両首脳は2回目の対面会談に前向きな姿勢を見せており、プーチン氏にとっては、戦闘停止で大幅な譲歩をすることなく、当面の制裁を回避するための時間稼ぎに成功した形となりました。この会談は、国際的な圧力を受けるロシアにとって、外交的舞台における重要な一歩となったと言えるでしょう。

今回の米露首脳会談は、国際社会におけるロシアの立ち位置、特にウクライナ問題に対するアプローチに大きな影響を与える可能性があります。プーチン氏が表向きの関係改善を演出しつつ、実質的な譲歩なしに時間を稼いだことは、今後の国際情勢の展開を注視する上で極めて重要なポイントです。


参照元: https://news.yahoo.co.jp/articles/4a9ebf92e7985c412ad74ba5bcbf34d9f25ae7f4