AIは論理的思考問題を解けるか?ベストセラー書籍が挑む「17頭の牛」の難問

現代社会において、「考える力」はますますその重要性を増しています。知識の有無ではなく、与えられた情報から論理的に答えを導き出す能力は、ビジネスから日常生活、さらには学習の場においても不可欠です。そんな「論理的思考力」を鍛える最高の知的トレーニングとして注目を集め、2024年の年間ベストセラー(ビジネス書単行本/トーハン調べ)で4位にランクインしたのが、書籍『頭のいい人だけが解ける論理的思考問題』です。本書が提示する論理的思考問題は、小中学校の受験や就職試験、さらにはGoogle、Apple、Microsoftといった世界トップ企業群の採用試験でも出題されるタイプであり、これまで当たり前とされてきた「正解」が通用しない現代を生き抜くための「思考力」を養う上で最適とされています。

大人だけでなく、多くの子供たちをも魅了しているこの書籍から、今回は特に有名な論理的思考問題の一つを厳選し、人間よりも賢いと称されるAI、具体的にはChatGPT 4oに挑戦させてみました。AIは果たして、人が創り、人が解いてきた複雑な論理の糸を解きほぐし、正解を導き出すことができるのでしょうか。

論理的思考問題とは?現代社会で求められる「思考力」

論理的思考問題は、その名の通り、論理的な思考のみを要求される問題です。専門知識や複雑な計算は一切不要であり、問題文に書かれている情報だけを頼りに、筋道を立てて考えることで答えにたどり着くことができます。これは、単なる暗記や情報処理能力とは異なり、与えられた前提から結論を導き出すクリティカルシンキング能力や、多角的な視点から問題解決に取り組む発想の柔軟性を鍛えるのに非常に効果的です。

この種の思考トレーニングは、企業が求めるビジネススキルとしても認識されており、特に変化の激しい現代において、既成概念にとらわれずに本質を見抜き、最適な解決策を見出す能力は極めて価値が高いとされています。多くの保護者からは、「ゲームばかりしていた子供が夢中で読んでいる」「兄弟で取り合いになった」といった声も寄せられており、遊び感覚で思考力を高められる点が、この書籍が幅広い層に支持される理由の一つです。

AI vs. 人間:話題の「17頭の牛」問題にChatGPT 4oが挑戦

「人が創り、人が解いてきた」伝統的な論理的思考問題に、現代の最先端技術であるAIがどこまで迫れるのか。この興味深い問いに答えるため、私たちは書籍『頭のいい人だけが解ける論理的思考問題』から、長年にわたり多くの人々を悩ませ、そして納得させてきた有名な問題「17頭の牛」をAIに出題しました。

問題の前提は以下の通りです。


「17頭の牛」

17頭の牛がいる。
A、B、Cの3人は、この牛を譲り受けることになった。
ただし条件として、牛全体の頭数のうち、Aは2分の1を、Bは3分の1を、Cは9分の1を、それぞれ譲り受けねばならない。
しかし、うまく分けられず困っていたところ、そこに偶然通りかかった友人が「あること」をして、条件どおりに牛を分配した。

友人はいったい何をしたのだろう?


AIは論理的思考問題を解けるか?ベストセラー書籍が挑む「17頭の牛」の難問

ベストセラー『頭のいい人だけが解ける論理的思考問題』の表紙と本から抜粋された問題文ベストセラー『頭のいい人だけが解ける論理的思考問題』の表紙と本から抜粋された問題文

さて、この一見すると矛盾をはらんだような難題に対し、AIはどのような答えを導き出したのでしょうか。

ChatGPT 4oによる鮮やかな回答:その「思考プロセス」を深掘り

AI(ChatGPT 4o)は、この「17頭の牛の分け前」として知られる論理的思考問題を、見事に解き明かしました。その回答と、そこに至るまでの思考プロセスを見てみましょう。


AIの回答:

これは有名な論理的思考問題で、「17頭の牛の分け前」として知られています。答えは、“友人が牛を1頭貸した”です。

■ 論理的に解いてみましょう

【前提】
・牛は全部で17頭。
・A:半分(1/2)
・B:1/3
・C:1/9

これを数学的に計算すると
→ 1/2 + 1/3 + 1/9 = ?

通分すると
→ (9/18)+(6/18)+(2/18)= 17/18

つまり、17頭をそのまま分けると「1頭分足りない(=17/18しか分配できない)」という問題が起きます。

■ 解決方法

そこで友人が登場して「1頭の牛を一時的に貸し」、合計を18頭にしました。すると…

・A:18 × 1/2 = 9頭
・B:18 × 1/3 = 6頭
・C:18 × 1/9 = 2頭

合計 → 9 + 6 + 2 = 17頭!

■ 結末

・条件どおり正確に分配できた。
・残った「1頭」は、友人が貸した牛なので、返却すればよい。

■ 答え

友人が自分の牛を1頭足して18頭にし、分配が終わった後にその1頭を引き取った。

これは、一見無理な配分条件も、ちょっと発想を変えることで解決できるという、論理的思考と発想の柔軟性を学ぶ良問です。


ChatGPT 4oは、まずこの問題が広く知られていることを認識し、その上で核心を突く答えを提示しました。そして、単に答えを出すだけでなく、その論理的な背景を順序立てて解説しています。分数の通分を通じて「全体が17/18にしかならない」という問題の本質を正確に捉え、その不足を補うための「友人の牛を一時的に借りる」という解決策を見出しています。最終的に、分配後に借りた牛が返却されることで、すべての条件が満たされるという完璧なプロセスを示しました。

まとめ:AIと人間が織りなす思考の可能性

今回の検証を通じて、AIが複雑な論理的思考問題、特に「17頭の牛」のような古典的な発想の転換を要する問題を解決できることが明らかになりました。AIは与えられた定義と情報のみで、人間の「ひらめき」にも似た創造的な解決策を導き出す能力を持つことが示されたのです。

この結果は、論理的思考が単なる知識の蓄積ではなく、問題を多角的に捉え、柔軟な発想で解決に導く能力であることを改めて浮き彫りにします。そして、人間が長年培ってきた「考える力」が、AIの進化とともにさらに豊かな可能性を秘めていることを示唆しています。論理的思考力は、AIが進化する現代において、私たち人間がより賢く、より創造的に生きるための鍵となるでしょう。

参考文献