上司と部下の飲み会、パワハラを恐れてコミュニケーションを避けていないか?

職場で「部下とのコミュニケーションがうまくいかない」「チームが機能していない」「上司の考えが分からない」といった悩みを抱えていませんか?近年、多くの企業で導入され“当たり前”となった1on1。ベストセラーとなったヤフーの1on1入門書『増補改訂版 ヤフーの1on1 部下を成長させるコミュニケーションの技法』(本間浩輔・著)では、実践的な対話手法が紹介されています。本稿では、上司が抱える「部下を気軽に飲みに誘えない」という共通の悩みについて、著者である本間浩輔氏の視点から掘り下げます。

業務外だからこそ求められる「配慮」

「部下を飲みに誘うとパワハラだと思われそうで怖い」。これは部下を持つ管理職からよく聞かれる声です。しかし、一方で部下側からの希望で定期的に飲み会を開催しているケースも存在します。この違いは、上司側の「配慮」にあると本間氏は指摘します。

そもそも飲み会は「業務外」の活動であり、強制すべきではありません。部下自身の意思を尊重するのは当然のことで、その上で「飲みに誘えない」と感じるなら、それは部下との間に良好な関係が築けていない可能性を意味します。「ハラスメントが怖い」という言葉の裏には、必要なコミュニケーションを怠っているケースもあるのではないでしょうか。

職場での上司と部下の対話風景。飲み会など業務外の場における円滑なコミュニケーションのヒントを探る。職場での上司と部下の対話風景。飲み会など業務外の場における円滑なコミュニケーションのヒントを探る。

「分かってください」では相互理解は進まない

「上司と飲みに行きたい!」と積極的に思っている部下は少ないかもしれません。しかし、自身のキャリア形成や業務を円滑に進めるためには、上司とのコミュニケーションは不可欠です。仕事の中で全てを伝えるのが理想ですが、それだけでは難しいのも現実です。

「1on1はやりたくない」「飲み会も行きたくない。でも私のことは理解してほしい」というのは、あまりにも都合が良すぎるとも言えます。部下側にも、自分の「キャリアの方向性」や「得意な仕事」「苦手な働き方」など、何でも良いので「伝える勇気」が必要です。上司に「よく見てほしい」と一方的に思うだけでは、十分な関係構築はできません。

だからこそ、部下は「自分の取り扱い説明書を渡す」くらいのつもりで積極的に話すべきであり、上司もそのような機会を意識的に設けるべきです。業務内の1on1が難しいならランチや雑談でも良いでしょう。飲み会も、あくまで多くの選択肢の一つとして捉えることが重要です。

まとめ

上司と部下の間のコミュニケーションは、ハラスメントへの配慮と相互理解のバランスが鍵となります。「業務外」の活動である飲み会においても、上司は部下の意思を尊重し「配慮」を示すことが不可欠です。同時に、部下も自身のキャリア形成のために、上司に対し「伝える勇気」を持ち、自ら情報を提供する「取り扱い説明書」のような役割を果たすことが求められます。1on1に留まらず、ランチや雑談、そして適切に配慮された飲み会など、多様な形で継続的な対話を実践することで、健全で生産的な上司と部下の関係を築くことができるでしょう。

参考文献

  • 本間浩輔. 『増補改訂版 ヤフーの1on1 部下を成長させるコミュニケーションの技法』. 日本経済新聞出版, 2017.