近年、飲食店での多様なニーズに応えるサービスが求められる中、顧客と店舗側の間で新たな「常識」に関する摩擦が生じている。特に韓国では、成人客が「お子様ランチ」を注文した際に、店員から不快な対応を受けたと主張する事例がオンラインコミュニティで大きな波紋を呼んでいる。この一件は、単なる個人の体験談に留まらず、サービス業における顧客対応のあり方や、メニューの「対象年齢」といった根深い問題を提起している。
「お子様ランチ」注文で物議、何が問題だったのか
発端は、韓国の会社員がオンラインコミュニティ「ネイトパン」に投稿したエピソードだ。この会社員は、小食であるため、昼食に卵焼きとスープがセットになった「お子様ランチ」を選んだ。注文時、最初の店員は「お一人ですか？本当にいいんですか？」と確認したが、会社員が「小食なのでいいんです」と答えると、そのまま注文を受け付けた。
しかし、料理が提供されて間もなく、別の店員が客の席に近づき、「5歳ですか？子どもですか？」と大声で尋ねたという。この質問は、周囲の客にも聞こえるような音量であり、会社員は公衆の面前で羞恥心を覚えるほどの屈辱的な対応だと感じた。会社員は「けちったのではなく、内容が自分に合っていたから選んだ。なぜここまで言われなければならないのか。注文を断ってくれたら他のメニューにしたのに」と、自身の不満と困惑を訴えた。この投稿は瞬く間に広がり、閲覧数は5万回を超え、100件以上のコメントが寄せられるほどの関心を集めた。
お子様ランチ注文の是非を問う韓国のオンラインコミュニティの議論風景
ネット上の賛否両論と社会の視点
この一件に対し、韓国のインターネット上では賛否両論が巻き起こった。一方では、店舗側の対応を厳しく批判する声が多く上がった。「注文を受けておきながら、客に恥をかかせるような態度は礼儀に反する」「顧客の選択を尊重せず、公然と羞恥させるのは明らかに問題だ」といった意見は、サービス業における基本的な顧客対応の原則に反するという見方を示している。消費者の選択肢を店舗側が一方的に制限したり、特定のメニューに対して年齢制限を暗黙的に設けることへの疑問も呈された。
一方で、会社員の行動に批判的な意見も存在した。「お子様ランチは家族連れを対象としたサービスであり、大人が単独で注文するのは店にとって負担になる」「ビュッフェで小食だからといって子ども料金を要求しても通らないのと同じ理屈だ」といった声は、メニューの提供背景や店舗側の経営状況を考慮する必要があるという立場を示唆している。これらは、「お子様ランチ」が単なる量や内容だけでなく、家族層への特典や子供向けの特別な体験といった意味合いを持つと解釈している。
この論争は、単に「お子様ランチ」の注文を巡る個別のトラブルではなく、社会における「常識」や「期待」が多様化している現状を浮き彫りにしている。店舗側は顧客の多様なニーズをどこまで受け入れるべきか、また顧客はサービスの提供意図をどこまで理解し、配慮すべきかという問いを投げかけている。今後のサービス業においては、明確なメニュー説明と、客の意図を尊重しつつ適切なコミュニケーションを取る能力がより一層求められるだろう。
参考文献
- KOREA WAVE/AFPBB News (2025年8月17日). 韓国の会社員「お子様ランチ注文で店員に大声で辱められた」…ネットで賛否両論. Yahoo!ニュース.
https://news.yahoo.co.jp/articles/8106682725ed1e10429bccea668ffb0796b71d5b
