18年前、茨城県日立市で、あるネイリストが不可解な死を遂げました。念願の美容室をオープンさせたその日、しかも入籍を9日後に控えたまさに「幸せの絶頂期」に、なぜ彼女は命を絶たなければならなかったのか。当時の警察は事件と自殺の両面から捜査を進めましたが、誰もが首を傾げたこの事件の真相は不明のまま、時が経ちました。本稿では、当時の状況を振り返り、その謎に包まれた死の経緯を紐解きます。
茨城県日立市で発生したネイリスト死亡事件の捜査状況を示すイメージ。
開業と入籍を控えた「幸せの絶頂期」
2007年5月、茨城県日立市で、つけ爪の施術を行う専門家であるネイリストのAさん(当時29歳)は、自身が携わる美容室の開業当日に、突然この世を去りました。Aさんは当時、10歳年上の男性美容師Sさん(当時39歳)との入籍をわずか9日後に控えており、まさに人生における最高の時期を迎えているように見えました。それだけに、彼女の死は周囲に大きな衝撃と疑問を投げかけました。
AさんとSさんは、共同で美容室を開業するため、総額6000万円を投じて日立市鹿島町に店舗兼住宅を建設していました。2007年の春に完成したこの建物は、1階に美容室とAさんのネイルアートスペース、2階に従業員用の会議室、リビング、そしてAさんとSさんの寝室、さらにはSさんの母親の部屋が設けられ、Sさんの母親(当時68歳)も同居することになっていました。
開店初日の不可解な出来事
開店初日である2007年5月24日、Aさんは2階の自室でネイルサロンの準備を進めていました。一方、Sさんは1階で複数の従業員と共に、来店した客のカットなどを行っていました。午前10時40分頃、Sさんは店を訪ねてきた友人2人と共に2階へ上がり、Aさんを交えて談笑したと言います。その後、Sさんは午後7時頃に1階へ戻りました。
午後3時10分頃、Aさんは友人2人を見送り、夕食の準備のため再び2階へ上がりました。これが、彼女の姿が確認された最後の瞬間となりました。
1階でSさんを含むスタッフミーティングが終了した午後8時過ぎ(報道によっては午後7時30分頃とされることもあります)、2階から「ドーン」という物が落ちるような大きな音が聞こえたとされます。この音は数人の従業員が耳にしましたが、特に気にかける者はいなかったとのことです。そして午後9時頃に店は閉店。Sさんが2階へ上がったのは、閉店から少し経った午後9時20分頃のことでした。
未解明の死が残した深い謎
ネイリストAさんの死は、彼女の人生が最も輝いていた時期に突然訪れたことで、その背景に深い謎を残しました。警察による捜査は、自殺と事件の両面から行われたものの、決定的な結論には至らず、真相は今日に至るまで明らかになっていません。幸せの絶頂期に発生したこの悲劇は、多くの人々の心に疑問符を投げかけたまま、未解明のままであり続けています。
参考文献
- 『読んで震えろ!世界の未解決事件ミステリー』(鉄人社、2024年)より一部抜粋・構成