近年、観光客の急増に伴う「オーバーツーリズム」が深刻化し、都市部での住環境悪化への懸念が高まっています。特に、高市早苗総理の「台湾有事発言」に端を発する日中関係悪化で、中国人訪日客の減少が予測される中で、「むしろ歓迎」と受け止める声が少なくないのは、ここ数年の外国人旅行者の急増、そしてそれに伴う民泊の増加が無関係ではありません。マンションブロガー「マン点」氏は、民泊を巡る行政対応の「差」が、新たな火種を生む可能性を指摘しています。
「特区民泊」が苦情を倍増させた大阪市の現状
東京23区においても民泊を巡る状況が変化しつつありますが、この動きを牽引するのは、2023年のコロナ禍終結による観光需要の回復です。特に大阪市では、国家戦略特区に指定された「特区民泊」の営業届出件数が急増し、ついに7000件を突破しました。2018年施行の住宅宿泊事業法に基づく民泊には年間180日以内の営業日数制限があるのに対し、この「特区」ではその制限がないため、歯止めがかからない状況となっていました。通常の民泊届出件数が2025年11月時点で2169件にとどまっているのとは対照的です。
民泊届出件数が急増している地域を示す図
しかし、問題はその件数だけにとどまりません。ゴミ出し違反や深夜騒音、キャリーケースの音など、住民からの苦情が多発しており、2024年度の苦情件数は399件と前年度比で倍増しました(大阪市のプロジェクトチーム資料)。生活環境の悪化は、もはや看過できない水準に達しています。この状況を受け、大阪市はついに動き出しました。横山英幸市長は9月30日、新規申請の当面停止を決定し、年内にも国の正式承認を得る見通しです。
東京23区でも拡大する民泊トラブルと規制強化の動き
インバウンド需要の受け皿としての民泊の役割を認めつつも、住民保護を優先する姿勢は大阪市だけではありません。東京23区でも、民泊に対する規制強化の動きが相次いでいます。背景には、東京23区でもコロナ禍が明けた2023年度以降、民泊に関する苦情件数が急増している現状があります。特に新宿区では2024年度に561件と前年から大幅に増加し、豊島区も120件と増加しました。これは、水際対策解除によるインバウンドの本格的な回復に伴い、民泊の稼働率が向上した結果、周辺住民との騒音やゴミ出しトラブルが多発している実態を明確に示しています。
これらの動向は、過度な観光客の流入がもたらす社会問題に対し、自治体が住民の生活環境保護を優先する姿勢を強めていることを示唆しています。今後、他の地域でも同様の規制強化の動きが広がる可能性があり、民泊事業者はより一層、地域住民との共生に配慮した運営が求められるでしょう。
参考文献
- Source link
- マンションブロガー「マン点」氏のレポート
- 大阪市のプロジェクトチーム資料





