韓国の尹錫悦(ユン・ソギョル)大統領の国政支持率が、就任後初めて60%を下回る事態となり、与党「国民の力」に緊張が走っています。この支持率下落の決定的な要因の一つとして、祖国革新党のチョ・グク前代表に対する特別赦免・復権が挙げられており、この「チョ・グク変数」が今後の韓国政治にどのような影響を及ぼすか、懸念の視線が強まっています。与党内からも「(チョ・グク氏の)赦免を入試不正の容認と理解してはならない」との声が上がっています。
尹錫悦大統領の支持率と政党支持率の動向
尹錫悦大統領の国政支持率下落を示す調査結果が相次ぐ中、8月15日に発表された韓国ギャラップの定期世論調査(8月12日~14日、全国の有権者1007人を対象とした無線電話面接調査、信頼水準95%、標本誤差±3.1ポイント)によると、尹大統領の職務遂行に対する支持率は就任後初めて60%を割り、59%(不支持率30%)となりました。直前の7月第3週の調査と比較すると、支持率は誤差範囲内ながらも5ポイント下落し、不支持率は7ポイント上昇しています。また、与党「国民の力」の政党支持率も、尹大統領の就任以降で最低の41%を記録しました。
特赦が支持率に与えた影響の詳細
韓国ギャラップの調査で、不支持理由の第1位となったのは「特別赦免」(22%)でした。チョ・グク前代表の赦免については、賛成(43%)と反対(48%)が拮抗しており、特に無党派層では反対(63%)が賛成(20%)の3倍に達しています。ただし、支持率下落の原因はチョ前代表の赦免だけでなく、李春錫(イ・チュンソク)議員(元共に民主党)の株の借名取引問題や、株式譲渡税の賦課基準引き下げの動き、光復節の「国民任命式」問題など、複数の要因が複合的に絡み合った結果だと分析する専門家(メタボイスのキム・ボンシン副代表)もいます。
光復節特赦で釈放後、国民に挨拶する祖国革新党のチョ・グク元代表
与野党の反応と今後の展望
チョ・グク前代表の赦免・復権を「政治検察の被害者の名誉回復」であると強調してきた野党「共に民主党」は、今回の赦免が引き起こす支持層離脱の幅について慎重に見極めようとしています。指導部のある議員は、「最近の調査だけで(下落が始まったと)判断するのはまだ早い。近いうちに行われる韓米、韓日首脳会談まで見守るべきだ」と述べています。しかし、「入試不正」に対する若者世代の反感が再燃し、陣営対立の新たな火種になりかねないという懸念の声も根強くあります。共に民主党のユン・ジュンビョン議員は8月16日、フェイスブックに「赦免することまでは良いが、赦免を入試不正の容認と理解するのは別の問題だ。チョ・グク赦免後の人々の沈黙を、チョ・グクの『親の七光り』に対する『同意』と解釈するのは誤り」と投稿し、ハンギョレの電話取材に対して「『公正』という価値を軽視しているかのように、メッセージに混乱を与えてはならない」と強調しました。
一方、なかなか支持率回復の機会を見出せずにいた与党「国民の力」にとっては、チョ前代表の赦免は支持層結集の好材料となるとの見方もあります。忠清圏の初当選議員は、「チョ前代表は当面、『ニュースメーカー』となる可能性が高く、彼を否定的に見る有権者はより強く反発する可能性がある」とし、「各事案に対する民意の流れを綿密に把握しながら、国政をより繊細に設計しなければならない」と述べ、国民の力の今後の対応が重要であるとの認識を示しました。
結論
尹錫悦大統領の支持率が就任後初めて60%を割り込んだ背景には、チョ・グク前代表に対する特別赦免という大きな政治的波紋が関係しています。この赦免は、韓国世論を二分し、特に若年層や無党派層からの反発を招く結果となりました。与野党双方にとって「チョ・グク変数」は今後の政治戦略を左右する重要な要素となるでしょう。特に、国民の力は民意の動向を慎重に分析し、国政運営に反映させる必要に迫られています。
参考文献
- 韓国ギャラップ世論調査(当該記事のデータ元)
- ハンギョレ新聞(本記事のオリジナルソース)