戦後80年:天皇皇后両陛下が戦没者追悼式に込めた「記憶継承」の願い

2025年8月15日、東京都千代田区の日本武道館で行われた全国戦没者追悼式に、天皇皇后両陛下がご臨席されました。両陛下は「全国戦没者之霊」と記された標柱の前に進まれ、正午の黙とうの後、天皇陛下は平和への深い願いを込めたおことばを述べられました。戦後80年という節目の年にあたり、陛下のおことばには、戦争の記憶と平和の尊さを次世代へと「語り継ぐ」という、両陛下の強いご決意が凝縮されていました。

全国戦没者追悼式で深い祈りを捧げられる天皇皇后両陛下全国戦没者追悼式で深い祈りを捧げられる天皇皇后両陛下

陛下が初めて用いた「語り継ぎ」の表現

今年の追悼式で天皇陛下が述べられたおことばには、特に注目すべき一節がありました。「戦中・戦後の苦難を今後とも語り継ぎ、私たち皆で心を合わせ、将来にわたって平和と人々の幸せを希求し続けていくことを心から願います」という表現です。放送作家のつげのり子氏は、この「戦中・戦後の苦難を今後とも語り継ぎ」という表現が初めて盛り込まれた点に言及し、その意味の重さを指摘しています。現在、日本国民の約9割が戦争を知らない世代となり、先の戦争が多くの家族や若者の人生を奪ったという事実が風化することに対し、天皇ご一家は深い危機感を抱かれていると見受けられます。陛下のおことばからは、戦争を単なる物語として終わらせず、その悲惨さを未来へと確実に継承していくという強いお気持ちが感じられます。戦後生まれである両陛下は、今年の「記憶継承の旅」を通じて、戦争の悲惨さと平和の尊さを、未経験の世代へ伝えていくことの重要性を示されてきました。

おことばに凝縮された両陛下と愛子さまの平和への誓願

追悼式では、内閣総理大臣をはじめとする三権の長や遺族代表が追悼の辞を述べましたが、皇室担当記者によると、両陛下はそれぞれの話に体を向け、深くうなずきながら聞き入られていたとのことです。このご様子からも、今年の追悼式にかける両陛下の並々ならぬご覚悟が伺えます。天皇陛下のおことばは、国内外に大きな反響を広げるため、その内容は常に慎重に吟味されます。宮内庁関係者は、近年、陛下と雅子さまが時間をかけて一言一句おことばを練られていることを明かしました。特にコロナ禍中に苦しむ人々への言及があった際、一部保守派から「戦没者慰霊にふさわしくない」との声が上がった経験もあり、その表現には細心の注意が払われています。7月の那須御用邸でのご静養中や、8月初旬の須崎御用邸でのご静養中にも、両陛下は日常の公務を離れてなお、真摯におことばの表現に向き合われていたといいます。驚くべきことに、その熟考の場には愛子さまもいらっしゃいました。まさにご家族一丸となって、戦後80年という節目にふさわしい内容を深くお考えになっていたのです。

結論

天皇陛下と雅子さま、そして愛子さまは、戦後90年、さらには100年とその先にも、戦争の悲劇を風化させることなく語り継ぎ、決して繰り返させないという強いご決意を抱かれています。両陛下は愛子さまを交えながら推敲を重ね、平和への切なる誓願を、この記念すべきおことばに深く込められたのです。この「記憶継承」への決意は、日本が過去から学び、未来永劫平和を希求していく上で、極めて重要な意味を持つものと言えるでしょう。

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