オーストラリアで開催された高校生向けの「国際数学オリンピック(IMO)」において、長野県松本深志高校3年の狩野慧志さん(17)=長野県松本市=が満点を獲得し、見事世界1位の快挙を成し遂げました。信濃毎日新聞のインタビューに応じた狩野さんは、「自信はあったものの、結果は出題内容にも関わるため、満点を取れたのは本当に嬉しい」と喜びを語っています。IMOでの各国代表との競争を通じて、「自分よりも数学が強い人がいる」と実感したことで、さらに高いレベルへの挑戦を決意しています。
世界から集う精鋭たち、IMOの厳しさと舞台
今年のIMOは、7月15日と16日の2日間にわたって開催されました。世界110の国・地域から総勢630人もの精鋭たちが参加し、その数学的才能を競い合いました。問題は、代数、組み合わせ、幾何、整数論の各分野から厳選された計6問。出場者は各日4時間半をかけて3問ずつに挑むという、非常に厳格な形式で行われます。
極限の集中力、満点獲得への道のり
IMOにおいて最も難関とされるのは、2日目の第6問です。この問題は、狩野さんが得意とする組み合わせの分野から出題されました。解答の方針は比較的早く思いついたものの、答案が長大になり、書き終えたのは終了時刻の約10分前だったと言います。「焦りを感じながらも、目の前の問題を解くことに100%集中できた」と、当時の緊迫した状況を振り返りました。
目標達成の重圧と喜び、そして祝福
コンテスト終了から2日後、IMOの関係者から満点獲得の報せを受けました。長年目標としてきた満点に対するプレッシャーを常に感じていたという狩野さんは、「達成感と安心感がミックスされた気持ち」になったと語っています。周囲にいた日本代表の仲間たちからは、「おめでとう」という温かい祝福の言葉が寄せられました。
輝かしい2年連続の金メダル、レジェンドとの出会い
狩野さんのIMO出場は今年で3年連続となります。成績上位12分の1に贈られる金メダルは、昨年のIMOに続いて2年連続での獲得という輝かしい実績です。閉会式では、数々の業績で知られる著名な数学者、テレンス・タオさん(米カリフォルニア大ロサンゼルス校教授)から直接金メダルを首に掛けてもらい、「ウェルダン(よくできた)」と声をかけられたと明かしました。
国際数学オリンピックで金メダルを獲得し、喜びを語る狩野慧志さん
次の夢へ向かって、数学の深化と未来の展望
今回の出場でIMOは最後となり、「もう出ることはない」と少し寂しそうな表情を見せた狩野さん。今後は大学受験に集中し、東京大学への進学を目指します。近々、山梨県北杜市で開かれる夏季セミナーに参加し、大学レベルの数学を学ぶ予定です。将来的には数学者を目指しており、特に「組み合わせの分野を深く研究したい」という具体的な目標を語っています。
日本の数学界に刻まれた歴史、快挙の意義
今年のIMOで満点を獲得したのは世界で5人でした。数学オリンピック財団(東京)によると、日本人で満点を取ったのは2022年以来で、狩野さんは史上5人目の快挙となります。今年の日本代表の成績は、狩野さんを含む金メダル3人、銀メダル2人、銅メダル1人という素晴らしい結果でした(金、銀、銅が授与される割合は1対2対3)。国別ランキングでは、中国、米国、韓国に次ぐ第4位という好成績を収め、日本の数学教育の質の高さを示しました。
狩野慧志さんの今回の国際数学オリンピックでの満点世界一という偉業は、彼自身の類稀なる才能と努力の結晶であると同時に、日本の若き才能が世界レベルで活躍できることを証明するものです。彼の今後の学業、そして数学者としての未来に、大きな期待が寄せられています。
[引用元] 信濃毎日新聞, Yahoo!ニュース