松本市、児童センターの過密化に警鐘:夏休み、子どもの安全と居場所は

小学生の夏休みが本格化する中、長野県松本市内の児童センターでは、子どもたちの集中利用による過密状態が深刻化しています。少子化が進む一方で、児童センターの利用児童数は増加傾向にあり、猛暑による屋外活動の制限も相まって、子どもたちは長時間にわたり限られた空間で過ごさざるを得ない状況です。これにより、子どものストレス増大や、職員の目が届きにくくなることによる怪我のリスクが高まっています。松本市社会福祉協議会は「これ以上の受け入れは限界だ」と警鐘を鳴らし、子どもの安全確保への懸念を表明しています。

夏休み期間中、多くの児童が利用し過密状態にある松本市島内児童センターの下駄箱の様子。室内は子どもたちの活動で賑わっている。夏休み期間中、多くの児童が利用し過密状態にある松本市島内児童センターの下駄箱の様子。室内は子どもたちの活動で賑わっている。

島内児童センター:過密な現状と子どもたちの声

松本市島内にある島内児童センターは、市内23か所の児童館・児童センターの中でも特に利用者が多い施設の一つです。8月上旬には約170人の子どもたちが、決して広いとは言えない館内で、等間隔に並べられた机でブロック遊びや将棋、ジグソーパズルに興じていました。中には走り回る子も見られ、エアコンが設置された遊戯室では、学年と時間を区切ってドッジボールが行われています。

夏休み期間中、両親の仕事の都合で午前8時から午後7時ごろまでセンターで過ごすという島内小4年の荒井陽さん(10)は、「長く感じる。友達が帰ってしまうと退屈だ」と、閉鎖的な空間での長時間滞在に対する素直な気持ちを語ります。彼にとって、体を思い切り動かせる遊戯室でのドッジボールが一番の楽しみだといいます。

深刻な空間不足と運営上の課題

島内児童センターの8月1日時点の登録児童数は268人に上り、このうち日常的に通うのは約170人。夏休み期間中はさらに一時利用者が1日平均10人程度加わり、施設の物理的限界が露呈しています。大広間を二つ、創作活動室、図書室、遊戯室を備えるものの、手狭感は否めません。特に、猛暑や事故防止の観点から、4月以降は子どもたちを屋外の広場に出せていない状況が続いています。さらに、発達特性があり、配慮や支援が必要な子どもがクールダウンできるような専用の部屋も不足しているといいます。

スタッフは正職員5人とパート職員11人の計16人体制で、常時7~8人が子どもの見守りにあたっています。しかし、これほど多くの人数を限られた空間で管理するには限界があり、一人ひとりの子どもと丁寧に関わることが難しいのが現状です。山岸紀子館長は「とにかく、子どもたちのけががないようにしたい」と、安全管理への強い意識を語る一方で、その困難さをにじませています。

国の基準未達と増え続ける利用児童数

厚生労働省は、児童センターで子どもが静かに過ごすための「専用区画」について、1人につきおおむね1.65平方メートル以上という基準を定めています。松本市社会福祉協議会によると、島内児童センターの専用区画はこの国の基準を下回っているとのことです。松本市は具体的な数値を公表していないものの、同センターが国の基準を満たしていないことは認めています。

放課後に子どもが児童館や児童センターで過ごす「松本市放課後児童健全育成事業」に登録する児童数は、2022年5月時点で2440人でしたが、本年度は2960人にまで増加しており、年々増え続けています。松本市こども育成課は、この「狭あい化」の課題を認識しており、「対策を考えていきたい」と述べていますが、具体的な解決策は未だ見えていない状況です。

結論

松本市内の児童センターが直面している過密化の問題は、夏休み期間中の子どもたちの安全と健やかな成長に直接的な影響を及ぼしています。施設の空間不足、職員の負担増大、そして国の基準未達という状況は、早急な改善を要する喫緊の課題です。子どもたちが安心して過ごせる居場所を確保するためには、市や関係機関が連携し、具体的な対策を講じることが不可欠です。この問題への市民の理解と関心が高まることで、未来を担う子どもたちのためのより良い環境整備が進むことが期待されます。

参考文献