トランプ・ゼレンスキー会談、緊張から友好へ:背景とウクライナ外交戦略の転換

ワシントンで開かれたトランプ米大統領とウクライナのゼレンスキー大統領による18日のホワイトハウス会談は、終始和やかなムードで進行しました。2月末の前回会談では、トランプ氏や当時のバンス米副大統領とゼレンスキー氏が報道陣の前で激しい口論を展開し、関係悪化を招いた経緯があります。しかし今回、ゼレンスキー大統領は米側に配慮し、過去の失敗を繰り返さないための周到な準備をしていたことがうかがえます。

ゼレンスキー氏の「感謝」戦略とその背景

会談冒頭、ゼレンスキー大統領はトランプ大統領に対し、「大変ありがとうございます、大統領閣下」と何度も感謝の言葉を繰り返しました。2月の会談では、バンス氏が「あなたは一度でも(米国に)感謝を述べたことがあるのか?」とゼレンスキー氏に詰め寄る一幕があり、これが関係に亀裂を生む要因の一つとなりました。欧米メディアは、こうした過去の経緯を踏まえ、ゼレンスキー氏が今回、積極的に謝意を表明することで、関係改善を図ったと分析しています。

ロシアによる侵略が続くウクライナにとって、国家防衛と戦闘継続には米国からの軍事支援が不可欠です。一方、トランプ政権は「アメリカ・ファースト」を掲げ、移民問題など内政を優先し、対外的な関与や外国への支援を抑制する姿勢を堅持してきました。2月の会談決裂は、この双方の立場の溝の深さを浮き彫りにした形です。

欧州首脳陣との連携と「作戦会議」

今回のゼレンスキー氏の訪米は、国際社会におけるウクライナの地位と米国の支援確保に向けた重要な外交的動きでした。トランプ大統領は15日のプーチン露大統領との会談後、ロシア側の主張に肩入れするような姿勢を見せていたため、その後のゼレンスキー氏との会談の行方が注目されていました。

ゼレンスキー氏の訪米には、イギリス、フランス、ドイツ、イタリアといった主要欧州諸国や欧州連合(EU)の首脳も足並みをそろえる形でワシントンを訪問。これは、トランプ大統領を欧州陣営へと引き戻し、ウクライナ支援への国際的な連携を再確認させるための戦略的な動きと見られます。会談直前には、ゼレンスキー氏と欧州首脳陣が首都ワシントンのウクライナ大使館内で「作戦会議」を開いていたと報じられており、今回の訪問の入念な計画性がうかがえます。

外交儀礼への配慮:服装の変更

米国ホワイトハウスでの会談に臨むウクライナのゼレンスキー大統領。米国ホワイトハウスでの会談に臨むウクライナのゼレンスキー大統領。

ゼレンスキー大統領は通常、外遊の際にも軍服風のシャツを着用することが多いことで知られています。しかし、この日の会談では、異例にもフォーマルなジャケット姿で臨みました。前回の会談時、一部の米保守系メディアの記者から、その服装が外交儀礼に反すると非難される場面があったためです。米メディアの報道によると、ホワイトハウスが事前にゼレンスキー氏側に対し、格式に合った服装を着用するよう要請していたとされています。

この服装の変更は、ゼレンスキー氏側が過去の教訓を活かし、細部にわたる配慮をすることで、米側との関係を円滑に進めようとした明確な意思の表れです。

ホワイトハウス訪問時、軍服ではなくジャケットを着用したゼレンスキー大統領の姿。ホワイトハウス訪問時、軍服ではなくジャケットを着用したゼレンスキー大統領の姿。

会談の成果と今後の展望

今回のトランプ・ゼレンスキー会談は、前回の「失態」を再現しないよう、双方、特にゼレンスキー氏側が細心の注意を払って準備を進めた結果、友好ムードの中で行われました。ゼレンスキー氏の「感謝」戦略や服装の変更、そして欧州首脳陣との連携は、ウクライナが国際的な支援を確保するために外交戦略を巧みに転換させていることを示しています。ロシアの侵攻が続く中で、ウクライナにとって米国からの支援は依然として生命線であり、今回の会談が両国の関係強化、ひいては国際情勢の安定にどのように寄与していくか、今後の動向が注目されます。

参考文献