米欧各国の首脳会合では、ウクライナ紛争の「和平」に対し、トランプ米大統領の前のめりな姿勢と、ウクライナおよび欧州側が目指す「停戦」との間に顕著な温度差が浮上しました。トランプ氏は、ウクライナのゼレンスキー大統領に対し、領土割譲や不透明な「安全の保証」の受け入れを迫りつつ、ロシアのプーチン大統領との3者会談へ突き進む構えを見せています。
トランプ氏の「和平」志向と欧州の牽制
15日に行われた米露首脳会談では、トランプ氏が当初の「即時停戦」を求める立場から一転し、より踏み込んだ「和平」を一足飛びで志向する姿勢を明確にしました。今回の米欧首脳会合において、欧州側がいかにトランプ氏の性急な動きを制御するかが主要な焦点となっていました。
各国首脳は、米国の仲介努力に対して謝意を表しつつも、プーチン、ゼレンスキー両氏との3者会談によるディール(取引)に強い意欲を示すトランプ氏の動きを牽制しました。フランスのマクロン大統領は「3者会談の前に停戦が必要だ」と述べ、欧州からも参加する「4者」での会談が望ましいとの見解を示しています。また、ドイツのメルツ独首相は「停戦に取り組み、ロシアに圧力をかけるべきだ」と強調しました。
「安全の保証」の課題とロシアの狙い
この日議論されたウクライナの「安全の保証」については、北大西洋条約機構(NATO)の集団安全保障に類似した枠組みが想定されています。しかし、米国のシンクタンク「シカゴ地球問題評議会」のダールダー元NATO大使は18日のCNNテレビで、「NATOが特別なのは、長年かけて(加盟国間の)統合運用性が確立されているからだ」と強調しました。この発言は、入念な制度設計が欠ければ、ウクライナにとって有効な対露抑止力とはなり得ないという見方を示唆しています。
一方で、ロシアはウクライナ東部のドンバス地域(ドネツク、ルハンスク両州)全域の割譲と引き換えに、大部分の戦線での戦闘停止を提案していると報じられています。しかし、この提案は、ロシア軍による占領状態の固定化につながる深刻な懸念をはらんでいます。
早期会談への動きと不透明な交渉環境
それでもトランプ氏は会合後、3者会談の前段階として、早くもプーチン氏とゼレンスキー氏の会談設定に動き出しました。「2週間以内」(メルツ氏)という極めて短期間で、ウクライナに少しでも有利な交渉環境を整備できるかは、依然として不透明なままです。
今回の米欧首脳会合は、ウクライナ和平への道筋がいかに複雑であるかを浮き彫りにしました。トランプ氏の性急な外交手腕と欧州各国の慎重な姿勢との間に存在するギャップが、今後の国際情勢におけるウクライナ交渉の鍵を握ることになるでしょう。