イーロン・マスク最高経営責任者(CEO)は、中国で発表されたテスラの新型6人乗りSUV「モデルY L」について、米国市場での生産を見送る可能性を示唆しました。この発言は、米国におけるテスラの自動運転技術とロボタクシー事業への注力が深く関係していると見られます。
テスラは先日、中国のソーシャルメディア微博(ウェイボー)を通じて、従来の「モデルY」よりも車体が大きく、3列シートで最大6人乗りが可能な新型SUV「モデルY L」を公開し、大きな注目を集めました。しかし、マスク氏は8月20日(現地時間)、自身のX(旧ツイッター)において、利用者の質問に対し「このモデルYの派生製品は、米国で来年末まで生産に着手しない。米国での自動運転時代の到来を考慮すると、全く生産しない可能性もある」と回答しました。
このマスク氏の発言は、米国でロボタクシーなどの完全自動運転車が本格的に普及すれば、多人数の乗車を目的とした大型車両の需要が減少するというテスラの見通しを反映していると解釈されます。テスラは近年、米国市場において、個人所有の乗用車販売よりも自動運転タクシーサービス事業に重点を置く姿勢を鮮明にしています。
また、ロイター通信は、将来的なトランプ政権が過去のバイデン政権下での電気自動車(EV)購入補助金を全面的に廃止する可能性があり、その場合、自動車メーカーが大型の3列シートEVで収益性を確保することが困難になる、との分析を示しています。これは、マスク氏の判断に影響を与える外部要因の一つである可能性も指摘されています。
マスク氏自身も、先月の第2四半期決算発表カンファレンスで「規制当局の承認を前提に、今年末までに米国の人口の半分ほどに自動運転サービスを提供できるだろう」と述べており、テスラの米国事業の方向性が明確に示されています。
中国で公開されたテスラの新型6人乗りSUV「モデルY L」。
今回の「モデルY L」の米国生産見送り示唆は、テスラが自動運転技術の進化と市場の変化を戦略の中心に据え、それに応じて製品ラインナップの優先順位を決定していることを明確に示しています。これは、単なる新モデルの発表にとどまらず、テスラの将来的なビジネスモデルの方向性を占う重要なシグナルと言えるでしょう。