ドラマやK-POPといった文化コンテンツが世界的な注目を集め、華やかなイメージが強い韓国ですが、その陰で貧困が深刻な社会問題として浮上しています。特に高齢者層における貧困率は高く、物価高騰も相まって、貧しさを理由に犯罪に巻き込まれるケースも増加。経済成長の裏側に広がる社会のひずみが、その根幹を揺るがし始めています。
路上に集う日雇い労働者:高齢者の厳しい現実
韓国・ソウルの一角、高層ビルが立ち並ぶ地域で、夜が明ける前の午前4時半過ぎ、作業着姿の中高年男性たちが続々と集まってきます。彼らは日雇いの仕事を求める人々で、時には1000人近くが集まることもあります。しかし、誰もが仕事を見つけられるわけではありません。「仕事が見つけられない」「歳を取っているので、現場ではあまり使おうとしない」といった切実な声が聞かれ、高齢者の雇用機会の厳しさを物語っています。
現在の韓国では、貧困問題が深刻化しており、特に66歳以上の高齢者の貧困率はおよそ4割に上ります。これは日本の約2倍という高い水準です。その背景には、年金制度の整備が追い付かず受給金額が少ないこと、そして生活を圧迫する物価高騰が追い打ちをかけていることがあります。
「チョッパンチョン」:ソウルの貧困層が集う居住区
ソウル市内には、貧困に苦しむ人々が集まる「チョッパンチョン」と呼ばれる地域が点在しています。「狭い部屋が集まる村」という意味を持つこの場所は、住宅価格の高騰が著しいソウルにおいて、保証金や権利金なしで月2万円から3万円ほどの家賃で部屋を借りられる点が唯一の利点とされます。
80代の男性が暮らすチョッパンチョンの部屋は、広さわずか2畳ほど。冷暖房設備もなく、衣類が所狭しと並べられ、卵などの食材が床に直置きされています。トイレや風呂は共同で、壁は剥がれ落ち、カビや水漏れも目立つ劣悪な環境です。十分な年金もなく、高齢のため新たな仕事も見つからないこの男性は、「良くはないけれど、外で寝るよりはいい。凍死せず、夏に雨が降っても死にません」と語り、厳しい現状の中でわずかな安息を求めています。
ソウルの「チョッパンチョン」に暮らす80代男性の狭い部屋。月2~3万円の家賃で冷暖房設備もなく、劣悪な住環境が貧困層の厳しい現実を物語る。
貧困が招く新たな犯罪と借金の連鎖
貧困は、時に人々を犯罪に巻き込み、借金の連鎖へと引き込みます。ある女性は、「政府支援」を謳うサイトで金を借りようとしたところ、個人情報を悪用され、銀行口座が不正に契約される被害に遭いました。結果として、この女性は罪に問われ、20万円の罰金を科されましたが、支払う余力はなく、無利子で金を貸してくれる支援団体を頼らざるを得ませんでした。
女性は「区役所に何度も助けを求めましたが、何度話しても対応してもらえませんでした」と、行政の支援が行き届かない現状を訴えます。支援団体を運営するオ・チャンイク氏は、「罰金を払えないという理由で監獄に行く人も増えました。貧困問題や貧富の格差は、韓国の根幹を揺るがす問題です」と警鐘を鳴らしています。
国際社会で芸能や美容が注目を集める裏側で、韓国社会のひずみは広がり続けており、その解決には国家的な取り組みが急務とされています。
参考資料
- TBS NEWS DIG Powered by JNN: https://newsdig.tbs.co.jp/articles/gallery/2121719?image=11
- Yahoo!ニュース: https://news.yahoo.co.jp/articles/4d1a10c53a35ea35c0cdf846561ddb50c7815732