日本の文学、英国でのリアルな評価:読書文化の比較から見えてくるもの

「海外に比べ日本は遅れている」という声もありますが、文化は国によって多様です。Xで人気の谷本真由美氏が、世界の政治社会ニュースを通じ、イギリスにおける日本の文学の受け止められ方や現地の読書文化を掘り下げます。日本人作家の快挙は素晴らしい一方で、その背景には意外な現実があります。

英国で評価される日本人作家たち、そしてその裏側

近年、日本人作家の作品がイギリスで注目されています。王谷晶氏の『ババヤガの夜』は英国推理作家協会賞翻訳部門を、柚木麻子氏の『BUTTER』は40万部以上のベストセラーを記録。これらは朗報ですが、本国イギリスでは、日本ほど大きく報じられていないのが実情です。

イギリスにおける「読書」は「特別な趣味」

この背景には、イギリス独自の読書文化があります。日本では読書が身近な趣味ですが、イギリスでは本の価格が高く、「特別な趣味」と見なされがちです。経済的余裕と知的好奇心のある層が読者。日本で文学賞受賞作が気軽に購入されるのと異なり、イギリスでは「ダガー賞」受賞が即座に購買に繋がることは稀です。多様な本が手軽に入手できる日本は、高い文化レベルを有すると言えるでしょう。
英国の書店で並ぶ書籍のイメージ。読書文化と本の価格が議論の焦点。英国の書店で並ぶ書籍のイメージ。読書文化と本の価格が議論の焦点。

イギリス人が好むジャンル:日常との対極を求める心理

イギリスで最も人気は、推理小説や犯罪テーマのクライムフィクション。連続殺人やサイコキラーを描く作品が特に好まれ、サイエンスフィクションも人気です。谷本氏の考察では、これはイギリス人の穏やかな日常と深く関連します。都市部と異なり、多くが牧歌的な田舎に暮らし、現実とはかけ離れた「恐怖」や「未知」に触れたい欲求が、読書へと向かうのです。
イギリスで注目を集める日本人作家、王谷晶氏の『ババヤガの夜』と柚木麻子氏の『BUTTER』の書籍表紙。イギリスで注目を集める日本人作家、王谷晶氏の『ババヤガの夜』と柚木麻子氏の『BUTTER』の書籍表紙。クライムフィクションの主な読者は中高年の女性で、ブックフェアでも女性の姿が目立ちます。「切り裂きジャック」のような凶悪事件ドキュメンタリーが繰り返し高視聴率を記録するのも、この心理の表れ。日本で「3億円事件」や福田和子元受刑者のエピソードが幾度も映像化される現象と、通じるものがあります。

結論

日本人作家の国際的な活躍は目覚ましいですが、評価や読書文化は国によって大きく異なります。イギリスでは読書が特別な趣味と位置づけられ、日本のようなアクセシビリティはありません。この比較は、日本の多様な文学環境が持つ文化的な豊かさを浮き彫りにします。国際ニュースを多角的に捉え、背景にある文化の違いを理解することは、世界をより深く知る上で不可欠です。

出典

https://news.yahoo.co.jp/articles/94748c64d3f00d4353130839d0c6bc02a6175e22