ドネツク住民の声:「ロシアとの合意に価値なし」占領下の実態と和平案への疑念

ウクライナ侵攻を続けるロシアのプーチン大統領が和平の条件として東部2州の割譲を要求する中、ドネツク州ではウクライナ側が防衛できている地域はわずか25%に過ぎません。この逼迫した状況下で暮らす住民たちは、どのような思いを抱いているのでしょうか。彼らの切実な声から、占領下の厳しい現実と、ロシアとの合意に対する深い不信感が浮かび上がります。

ロシアの「安全の保証」への強硬姿勢

ウクライナの「安全の保証」を巡る国際社会の議論は、新たな局面を迎えています。イギリスやフランスなどは、ウクライナへの地上部隊派遣を模索していますが、これに対しロシアは猛烈に反発しています。ロシアのラブロフ外相は、「欧州軍のウクライナへの駐留で安全の保証を実現しようとしているが、ロシアはそれを絶対に受け入れない」と明言しました。さらに、「軍の駐留はウクライナ領土への外国の介入」であるとし、ロシア抜きでの議論を強く批判。あくまでもロシアが主導権を握るべきだと牽制し、「ロシアは自国以外の利益を主張しないが、正当な利益は厳格に確保する」との立場を強調しています。

ドネツク州におけるロシア軍の占領拡大

ロシア軍が公開する動画では、最近、ドネツク州西部での戦果を強調するものが増加しています。プーチン大統領は先日、ドナルド・トランプ大統領に対し「ドネツク州全域の割譲を求める」と要求したと報じられました。ドネツク州におけるロシア軍の侵略地域は着実に西へと拡大し、現在では州全体の75%を占領するに至っています。残る25%の地域は今どうなっているのでしょうか。前線から約14キロに位置するドネツク州ドルジュキウカ地区では、18歳以下の家族がいる家には強制避難命令が出されており、この地も間もなく戦場となることが予想されています。

占領下の生活と「ロシアとの合意」への不信

ドルジュキウカ地区に住むオレクサンドルさん(35歳)は、占領下の過酷な現状について語りました。「力で取れないものをロシア軍は破壊します。今日、10発の爆弾で空爆された地域もあります。何とか生き延びようとする1500人の人々が残されており、水や食料がないことに耐えきれず、歩いて避難する人もいます」。しかし、主要道路を通るとロシア軍のドローンによる攻撃の危険があるため、避難自体も命がけだといいます。

オレクサンドルさんは、占領地の未来についても深い懸念を表明しています。「占領地がどうなるかを見聞きしてきました。ロシア民族の人々が占領地に送り込まれ、以前の住民たちは存在を消されてしまうのです」。さらに、「“ロシアから来たロシア人”と占領地の住民が友情を育めるか」という問いに対し、「平等関係にはなりません。マリウポリの例で明らかですが、現地の住民たちは住宅をロシア人に乗っ取られました。彼らにとって占領した住宅は納屋にすぎません」と、占領地で起こっている住民の追放と財産の略奪を強く非難しました。

停戦が協議されようとしている現状に対し、オレクサンドルさんは国際社会、特にアメリカのトランプ氏に向けてメッセージを送りました。「尊敬するドナルド・トランプ氏。ロシアに出し抜かれてプーチンの言いなりになったでしょう。戦争や捕虜を体験した住民の話を聞いてください。本当の歴史も調べてください。ロシアとの合意が何の価値もないことを理解できます。アメリカを偉大にしたいなら、世界のあらゆる場所でどう振る舞うべきか分かるはず。このままの行動だと偉大になるのはロシアです」。彼の言葉は、ウクライナ東部に暮らす人々の、ロシアに対する根深い不信と、国際社会への切なる訴えを代弁しています。

ロシアとの合意に価値はないと語るドネツク州の住民ロシアとの合意に価値はないと語るドネツク州の住民

結論

ドネツク州におけるロシアの領土割譲要求と、それに対するロシアの強硬な姿勢は、ウクライナ紛争の和平への道を極めて困難にしています。一方で、占領地で実際に生活する住民たちの声は、国際社会が認識すべき厳しい現実を突きつけています。彼らは、ロシアとのいかなる合意も「価値がない」と断言し、国際社会に対し、占領地の真の状況と歴史を深く理解した上で行動するよう強く求めています。この紛争がもたらす人道的な危機と、住民たちの声に真摯に耳を傾けることが、持続可能な平和を築くための第一歩となるでしょう。

参考文献

  • テレビ朝日