北朝鮮、年間数十万台の「自国産携帯電話工場」を大々的に宣伝:専門家は懐疑的な見方

北朝鮮が年間数十万台もの携帯電話を独自生産できる工場を保有していると大々的に宣伝し、その技術力を誇示した。平壌の万景台区域に位置する「チンダルレ手電話機工場」について、北朝鮮の立場を代弁する在日本朝鮮人総連合会機関紙である朝鮮新報は、同工場が「精密度と生産性が非常に高い水準」にあると報じている。この工場は2018年3月に延べ建築面積6087平方メートルの規模で設立された。

北朝鮮による「チンダルレ手電話機工場」の能力誇示

朝鮮新報の報道によると、チンダルレ手電話機工場は「国内で設計・製作された手電話機『チンダルレ3』の生産を皮切りに、数十種類の多様な知能型および機能型手電話機を生産している」と述べ、生産の多角化を強調している。さらに、「液晶顕示機の手接触板(液晶タッチスクリーン)接合工程の無塵級数は10級であり、生産現場の空気清潔度は国際的水準」であると紹介した。スマートフォン液晶のような高精密製品の製造には、空気中の粒子状物質を遮断するクリーンルーム環境が不可欠とされるが、「無塵級数10級」の具体的な国際標準における水準は明確ではないものの、工場環境が国際レベルであると強調する意図が読み取れる。国際標準ISO 14644-1では、空気体積あたりの粒子数に基づき清浄度をクラス1から9まで区分している。

北朝鮮が独自生産を主張する「チンダルレ」手電話機のイメージ。朝鮮新報と電子商取引サイト「マンムルサン」で紹介された製品。北朝鮮が独自生産を主張する「チンダルレ」手電話機のイメージ。朝鮮新報と電子商取引サイト「マンムルサン」で紹介された製品。

北朝鮮の情報通信(IT)企業であるヨンプン商業情報技術社が運営する電子商取引サイト「マンムルサン」も、この工場について言及している。それによると、チンダルレ手電話機工場は「年間数十万台の生産能力を備え、手電話機生産に関連する液晶表示装置(LCD)生産工程、主基盤(メインボード)組立工程などのライン化された生産工程と、製品包装工程、検査工程が完備されている」という。

専門家が指摘する「自社生産」の疑問点

しかし、外部の専門家たちは北朝鮮のこれらの主張に対し、疑問を呈している。米国のシンクタンク「クリムソンセンター」のマーティン・ウィリアムス研究員は、昨年「38ノース」に掲載された報告書「2024年北朝鮮のスマートフォン」の中で、「北朝鮮で販売されるスマートフォンはすべて中国企業が生産しており、北朝鮮の業者は注文者商標付着(OEM)方式で供給を受けている」と分析した。この分析は、北朝鮮がスマートフォンを設計から生産まで独自に遂行しているという主張が誇張されている可能性を示唆している。

結論

北朝鮮が自国の携帯電話生産能力と技術力を大々的に宣伝している一方で、国際的な専門家からはその主張の信憑性に対する懐疑的な見方が示されている。この情報の隔たりは、北朝鮮の技術開発と対外宣伝戦略、そして国際社会がそれをどのように評価しているかを浮き彫りにしている。今後も北朝鮮の技術力に関する発表と、それに対する国際社会の客観的な検証の動向が注目される。

参考資料