8月半ばを過ぎ、2024年夏ドラマは後半戦に突入しました。しかし、7月の序盤戦に引き続き、今クールは飛び抜けた話題作が少ないという印象が拭えません。『劇場版「鬼滅の刃」無限城編 第一章 猗窩座再来』をはじめとした映画興行の盛り上がりに、世間の注目が集まっている影響も大きいでしょう。ドラマ全体としては、かつての勢いが見られない現状にあります。
話題作に乏しい夏クールと局ごとの明暗
特に注目されるのは、かつて“ドラマの雄”と称されたTBSの陰りです。看板枠である日曜劇場は、視聴率こそ健闘しているものの、SNSやネットニュースでの話題性にはいまひとつ繋がりません。他枠のドラマも、視聴者を強力に引きつける作品が少ない印象です。
一方、今期のリーディングヒッターとして気を吐くのがテレビ朝日です。話題作を連発し、安定した存在感を示しています。そして、良作を多く手掛けるカンテレも、前期に続いて視聴者の心を掴む尖ったドラマを提供し、高い評価を得ています。現在の作品を昔のそれと単純に比較するのは困難であり、ネット配信サービスが全盛の現代において視聴率だけで作品の良し悪しを一概に判断することはできません。しかし、『御上先生』(TBS)などが注目を集めたわずか数ヶ月前の冬ドラマと比較しても、この夏クールは“世の中的な話題作”が生まれていないという印象は否めません。
夏ドラマの後半戦に入り、様々なジャンルのドラマが展開される様子。特にカンテレの話題作や、日常系、名作が注目される。
TBSの不調を象徴する日曜劇場『19番目のカルテ』の挑戦
今年に入ってTBSの不振が続いており、夏ドラマの中盤に至ってもその「凪」の状態が続いています。名作枠としてブランド認知度の高い日曜劇場で放送されている『19番目のカルテ』の苦戦は、昨今のTBSの不調を象徴していると言えるでしょう。
医療ドラマは根強いファンが多く、人気の高い鉄板カテゴリです。さらに、数々の人気キャラクターを演じてきた松本潤が主演であることも、放送開始前の期待値を大いに高めました。しかし、現状としてはその期待値に届いていないというのが正直なところです。
良質な人間ドラマとしての評価と課題点
『19番目のカルテ』のストーリー自体は決して悪くありません。様々な患者の病気だけでなく、彼らが心の底に抱える悩みや人生そのものにスポットを当て、彼らの背中をそっと押す総合診療医の仕事ぶりをフィーチャーした、良質なヒューマンドラマとして評価できます。
今後の展開にはまだ期待を寄せていますが、筆者は第5話まで視聴した時点では、まだ強く感情を揺さぶられるエピソードには出会っていません。ドラマ全体の半分が過ぎようとしている中で、どこかで一つ、ストーリー全体を引っ張るようなインパクトのあるエピソードが挟まれることを待ち望んでいます。
まとめ
2024年夏ドラマは後半戦に突入しましたが、世間を席巻するような大きな話題作の不在が目立ちます。特にTBSは苦戦が続き、日曜劇場『19番目のカルテ』も、その丁寧な作りとは裏腹に、視聴者の心を深く掴むには至っていないようです。一方で、テレビ朝日やカンテレは独自の路線で注目作を生み出し、存在感を示しています。残り半分となった夏クールで、各ドラマがどのような展開を見せ、視聴者の記憶に残る作品となるのか、今後の動向に期待が寄せられます。