兵庫県姫路市で50年以上の歴史を持つ老舗の住宅建設会社「株式会社企広」(「スムスタイル」の名称で知られる)が、突然破産手続きに入ったことが明らかになりました。4月22日には神戸地裁姫路支部で債権者集会が開かれ、着手金を支払ったものの住宅が未完成のまま放置されたり、既に引き渡された住宅に複数の重大な欠陥が発覚しながらも修理されないままになっているなど、多くの被害が報告されています。これは住宅購入者にとって深刻な社会問題であり、今後の動向が注目されます。
老舗「企広」の突然の破産と広がる被害
「お客様が楽しい人生をこれから送る場所で、苦しい思いをしていただかないよう、個別に資金計画のご相談に乗っております」と自社のウェブサイトで謳っていた株式会社企広は、4月10日から「家づくり応援キャンペーン」を展開していた矢先の20日後、突然の破産手続き申請という事態に陥りました。この突然の発表は、多くの顧客を困惑させ、経済的な打撃を与えています。
被害を訴える人々の中には、注文住宅の着手金を支払ったものの建築が始まらないケースや、既に完成・入居済みの住宅で断熱材不足や床下カビなどの深刻な施工不良が発覚し、修理を求めても対応されないままという状況が広がっています。債権者集会では、被害者からの怒りの声が上がるなど、緊迫した雰囲気の中で現状が報告されました。
深刻な欠陥:「断熱材不足」と「床下カビ」の実態
2020年に「企広」に3700万円で新居の建築を依頼したというAさん夫妻のケースは、同社の施工不良の深刻さを示す一例です。夫妻は「木を使った家が理想だった」「営業担当の印象が良かった」と信頼して契約しましたが、入居後にさまざまな問題に直面しました。
室内でエアコンを使用しているにもかかわらず、サーモカメラで壁を調べると、30℃近い高温を示す「真っ赤」な状態が確認されました。さらに、エアコンのない2階の部屋の角では40℃近い温度が計測されており、専門家は「断熱材が適切に入っていれば、このような温度にはならないはずだ」と指摘しています。Aさん夫妻は「暑さ寒さに耐えられない家になっている」と、住環境の劣悪さを訴えています。
サーモカメラで捉えられた断熱材不足の壁。室内で30℃近く、2階の角では40℃近くに達する箇所も。
明らかになる複数の施工不良と会社の対応
第三者機関による住宅調査の結果、Aさん宅では壁や天井の断熱材不足が明確に発覚しました。敷かれていた屋根裏の断熱材についても、一級建築士の石田隆彦氏は「天井の裏に断熱材を入れているのかは非常に疑問。壁と天井のつなぎ目が極端に温度が上がるなら、明らかにそこは隙間ができている。断熱材の施工としてはあり得ないやり方で工事が行われていたのではないか」と、施工の不備を厳しく指摘しています。
断熱材の問題だけでなく、外壁からは釘が浮き出ていたり、床下は広範囲にわたってカビが発生していることも確認されました。特にトイレ付近から異臭がするため床下点検口から確認したところ、内部がカビだらけだったとのことです。他にもドアが傾いているなど、多くの施工不良が見つかっています。
これらの欠陥を会社に指摘したところ、「施工不良はない」という一方的な回答が送られてきたといいます。Aさん夫妻は、打ち合わせ段階から「議事録を一切取らない」「2回目、3回目と同じ説明を繰り返す」など、不審な点が多々あったと振り返ります。被害額は2000万円近くに上るとされており、既に完成してしまった住宅の欠陥に悩まされています。
姫路で突然破産した建設会社「企広」が手掛けた住宅の外観
まとめと今後の展望
姫路の老舗建設会社「企広」の突然の破産は、多くの顧客に未曾有のトラブルと経済的損失をもたらしています。断熱材不足、床下カビ、外壁の釘浮き、ドアの傾きなど、住宅の根幹に関わる複数の施工不良が明るみに出ており、同社のずさんな工事と顧客対応が浮き彫りになりました。今回の事態は、注文住宅を検討している人々に対し、契約前の徹底した企業調査や、施工中の定期的な品質チェック、そして問題発生時の対応力など、より一層の注意と専門家による第三者チェックの重要性を強く訴えかけるものです。今後、被害者への救済措置や、類似の事態を防ぐための業界全体の取り組みが求められます。