歌手の椎名林檎が、北海道で開催された大規模音楽フェス「RISING SUN ROCK FESTIVAL 2025 in EZO」に出演した際、会場で一部のファンが振っていた“あるグッズ”がインターネット上で大きな議論を巻き起こしています。過去にも彼女の関連グッズが物議を醸したことがありますが、今回は特に「旭日旗」に似たデザインのミニフラッグが注目され、その反応は様々に分かれています。
「ライジング・サン」での旭日旗グッズ問題と背景
椎名林檎は、1999年から続く日本初の本格的なオールナイト野外ロックフェスティバルである「RISING SUN ROCK FESTIVAL 2025 in EZO」に17年ぶりに参加しました。8月16日のステージで披露された圧巻のパフォーマンスは観客を熱狂させ、その様子はテレビ番組でも大きく取り上げられるほどでした。
しかし、その盛り上がりの中で、椎名林檎が熱唱するステージ前でファンが振っていたミニフラッグが、一部で「旭日旗」を想起させるデザインであるとしてネット上で物議を醸しました。旭日旗は、歴史的背景から「帝国主義と軍国主義の象徴」と見なされ、特定の国々や人々からは非常にセンシティブに扱われることがあります。椎名林檎のグッズとしては過去にも旭日旗を連想させるものが販売されており、今回注目されたフラッグも当時のものでした。このフラッグが今回のフェスで新たに販売されたわけではありませんが、旭日旗に対して拒否反応を示す人々からは、過去のグッズであるか否かに関わらず、ファンが使用し、アーティスト側もそれを許容している点が問題視された形です。
椎名林檎がステージでパフォーマンスする様子。背景にライブの熱気が感じられる。
繰り返されるデザイン騒動:ヘルプマーク酷似グッズの炎上
椎名林檎のグッズを巡る騒動は、今回が初めてではありません。2022年には、アルバムに付属する3種類のグッズのうち、2種類のデザインが「ヘルプマーク」と「赤十字マーク」に酷似しているとして、大規模な炎上事件が発生しました。この事態を受け、アルバムの発売延期にまで発展する騒ぎとなりました。
特に問題視されたのは、外見からは分かりにくい障がいや難病を抱える人々が、周囲に援助や配慮を必要とすることを伝えるための公共マークである「ヘルプマーク」に類似したグッズでした。このような類似品が出回ることで、本当に支援を必要とする人々が正しく援助を受けられなくなる可能性が指摘され、社会的な批判を大きく浴びました。この際、CDの発売元であるユニバーサルミュージックは、「椎名林檎本人が参画・監修した制作物ではありません」と説明しましたが、椎名林檎自身は問題について沈黙を貫きました。この対応に対しては、「デザインに関わっていなかったとしても、自身の名前で出すCDに関する事柄なのだから、本人もコメントすべきだ」といった失望の声が多く聞かれました。
旭日旗騒動に対する世論の二極化
しかし、今回の「旭日旗騒動」に対する世間の反応は、2022年のヘルプマーク騒動とは異なり、椎名林檎を擁護する意見が目立つ結果となりました。インターネット上では、批判的な意見よりもむしろ、過敏な反応に対して冷静な視点や支持を示す声が多数寄せられました。
具体的には、「国を守る自衛隊の旗に何の問題もない」「甲子園で使われる朝日新聞の社旗にも同じように文句を言うべきではないか」「昔からある縁起の良い柄だ」「日本の若者までが旭日旗を悪と認識させられているのはおかしい」「好きなライブに難癖をつけるのはやめてほしい」といったコメントが散見されました。これらの意見は、旭日旗が日本文化の一部であるという認識や、表現の自由を重視する姿勢、あるいは特定の歴史観への反発を示していると考えられます。同じ「物議」を醸すデザイン問題でも、その対象となるモチーフの性質や、当時の社会情勢によって、世論の反応が大きく異なることが浮き彫りになりました。
独特の世界観を持つ椎名林檎は、時に議論を呼ぶモチーフを使用する傾向があります。今回の旭日旗騒動では擁護の声が多かったものの、今後も彼女のグッズデザインにおいては、その影響力と社会的な配慮がより一層求められるかもしれません。
参考文献:
- JPRIME (2025年8月23日). 椎名林檎、ライブでまた“旭日旗”グッズ炎上!今回は「擁護する声」が目立つワケ. Yahoo!ニュース. https://news.yahoo.co.jp/articles/9f23a864388a76fdd9409e8ed9e9b1ea6ddedfe8