今月、横浜市立中学校の校長が京急線内で女性のスカート内を盗撮した疑いで書類送検され、また栃木県では県立高校の女子更衣室に小型カメラを設置した教員が逮捕されるなど、教育現場での盗撮事件が相次いで発覚しています。6月には名古屋市と横浜市の小学校教員が児童を盗撮し、その画像をSNSのグループチャットで共有したとして逮捕・起訴されるなど、教育関係者による犯罪は社会に大きな波紋を広げています。これらの事件は、単なる個別の問題に留まらず、盗撮行為の深刻化と手口の巧妙化を示す警鐘となっています。
相次ぐ盗撮事件の捜査にあたる警察官のイメージ
「撮影罪」と「提供罪」の概要と現状
アトム市川船橋法律事務所の高橋裕樹弁護士は、「正当な理由なく、16歳未満の子どもを含む人の性的な部位や下着などをひそかに撮影することは『撮影罪』、その画像を他者に譲渡することは『提供罪』という性犯罪にあたる」と解説します。これらの犯罪は、暴行や痴漢に比べて「軽く見られがち」な傾向がありますが、被害者には一生消えない深い心の傷を負わせる極めて悪質な行為です。
特に、教育関係者や医師、公務員といった社会的信頼が求められる職業以外では、報道されることが少ないのが現状です。しかし、2022年7月に「性的姿態撮影等処罰法」が施行されて以来、盗撮行為の検挙数は増加の一途をたどっています。昨年1年間の全国での盗撮行為の検挙件数は8,323件に上り、過去最多を記録しました。高橋弁護士は、報道されるのは氷山の一角に過ぎず、実際の被害はさらに広範囲に及んでいる可能性を指摘しています。
巧妙化する手口と被害の深刻さ
急増する盗撮事案の約8割は、スマートフォンなどの携帯電話が使用されています。スマートフォンの高性能カメラは、常に手元にあり、周囲に不自然さを感じさせないため、出来心から安易に犯行に及んでしまうケースが多いとされます。しかし、この安易な行為が被害者の尊厳を著しく踏みにじる重大な犯罪であることに変わりはありません。
さらに悪質な手口として、小型カメラの利用が挙げられます。ボールペン型、腕時計型、メガネ型、文具型、ミントケース型など、その形状は多種多様で、一見しただけではカメラと認識できないものが増えています。高橋弁護士が担当した事案の中には、会社の机の下に電源タップ型のカメラを仕込み、同僚女性の下半身を隠し撮りしていた事例もあり、その巧妙さに警鐘を鳴らしています。このような見破りにくい隠しカメラの存在は、私たちの日常生活における警戒の必要性を一層高めています。
教育関係者による相次ぐ盗撮事件は、子どもたちの安全を脅かし、社会の信頼を揺るがす深刻な問題です。巧妙化する手口と増加する犯罪件数を受け、私たち一人ひとりが防犯意識を高め、法制度への理解を深めることが求められています。また、被害者支援の強化や、加害者への厳正な対処が、再発防止と安全な社会の実現に不可欠です。
参考文献: