東京メトロ丸ノ内線・新宿御苑前駅から徒歩6分の閑静なエリアに、ラーメン愛好家を魅了する「RAMEN MATSUI」がある。2023年5月のオープン以来、完全予約制ながら瞬く間に人気を集め、昨年発表された『ミシュランガイド東京2025』では、費用対効果の高い良質な料理を提供する「ビブグルマン」を獲得した名店として注目されている。その一杯は、「和」の繊細さを感じさせつつも、力強い出汁の風味が爆発的に広がり、多くのファンを虜にしている。
新宿御苑前の人気ラーメン店「RAMEN MATSUI」の洗練された外観
音楽から料理の世界へ:松井創氏のユニークな道のり
店主である松井創氏は、北海道北見市出身。学生時代は音楽活動に没頭する日々を送っていた。24歳で上京後も音楽を続けながら飲食店で働き、その過程で調理技術を習得し、調理師資格も取得。やがて調理責任者を任されるまでに成長を遂げた。この経験が、後のラーメン職人としての基盤を築くことになる。松井氏のキャリアは、音楽という情熱から始まり、飲食業界での実務経験を通じて料理への深い理解へと繋がっていった。
地域食材への情熱と「カニの端材ラーメン」開発
転機は、知人が北海道網走市で営む飲食店の事業拡大を手伝うことになった際に訪れる。店舗立ち上げから仕組み作り、さらには4店舗の統括マネージャーとして4年間従事。この経験から、地元客だけでなく観光客も集まる店を目指し、第一次産業との連携を模索し始める。東京農業大学オホーツクキャンパスで地域素材を使ったものづくりを学び、食材への探求心を深めた。
その後、紋別市の水産加工会社の飲食部門に携わる中で、炉端焼き店の起爆剤となるメニュー開発を任される。ここで生まれたのが、通常廃棄されがちなカニの端材を有効活用したラーメンだった。この革新的なラーメンは新聞にも取り上げられ、大きな反響を呼んだ。この成功が、松井氏にラーメンの持つ可能性とビジネスとしての面白さを強く意識させるきっかけとなった。
ラーメンビジネスへの転身と有名店での再出発
カニの端材ラーメンの成功を通じて、松井氏はラーメンが国内外から求められる普遍的な料理であり、美味しい商品を作り上げればビジネスとして大きな可能性があると確信する。しかし、そのビジョンを広げるには人手不足という課題に直面し、もどかしさを感じていた。
そして、37歳という年齢を「ゼロから勉強できるラストチャンス」と捉え、ラーメンをビジネスモデルとして追求することを決意。東京の有名ラーメン店「柴崎亭」の門を叩き、再び一からラーメン作りを学ぶ道を選んだ。この大胆なキャリアチェンジとたゆまぬ努力が、「RAMEN MATSUI」のビブグルマン獲得という栄誉へと繋がったのである。
参考文献
- Yahoo!ニュース (2025年8月25日). 「RAMEN MATSUI」の外観 – 筆者撮影. https://news.yahoo.co.jp/articles/c775536dcfb583f615039e6feae0461e3afa74b3